2019年11月21日
躁うつ病(双極性感情障害)

一般にうつ病は、ゆううつ気分を引き起こす疾患として知られています。

しかし、病歴や症状を詳細にお聞きすると、
「うつ病ではないうつ症状」
が存在することに気がつきます。

その1つが、躁うつ病(双極性感情障害)です。

躁うつ病では、気分の低下だけでなく、気分の高揚もみられます。

躁状態が強い場合は、
・せっかちとなる
・怒りっぽくなる
・自営業者や経営者では、事業を広げたくなる
・買い物やギャンブルが増え、無駄遣いが多くなる
・他者とのケンカが多くなる
・活動性が高まって、眠る時間が少なくなる
・自尊心と万能感が高まる
・一時的に妄想が出現することがある

などの症状がみられます。

症状の強い躁状態は、他者からみても明らかな違いを感じます。

 

双極性II型障害の存在

一方、明らかな躁状態に気づきにくい躁うつ病もあります。
一時的にテンションが高くなる、軽い躁状態がいくらかの期間続き、活動性が高まります。
 この時、仕事や用事がはかどるため、自分では困った自覚症状はありません。
 また、他者からみても分かりづらいことがあります。

しかし、一定期間の躁状態を経た後、急速に活気を失い、うつ状態に転じるケースが多くなります。

 こういうケースでは、活動できている間は困っていないため、受診されないことが多くなります。
 エネルギーが枯渇して、気力がなくなったとき、うつ状態として、来院されることが大半です。
 そのため、単極性うつ病か、双極性II型障害か区別しにくい、あるいは気がつかないケースが増えます。

 これは、後の述べる治療指針に違いに関係するため、見分けていくことが大切になります。

 

・新しい疾患分類では、うつ病と双極性感情障害は、別のカテゴリーとなった

これまで長い間、うつ病と躁うつ病(双極性感情障害)は、「感情障害」の疾患として、同じカテゴリー分類におさめられていました。

しかし、最近になって、最新版のDMM-5(アメリカ精神神経学会での疾患分類)にて、別のカテゴリー(疾患として、別の章)に分類されています。

日本で国際分類として使われているICD分類は、現在、10版から11版に30年ぶりに改訂されます。

ICD分類は、WHO(世界保健機関)が提唱する診断基準です。

 

うつ病と躁うつ病(双極性感情障害)では、治療法が異なる

うつ病の治療は、薬物療法では、抗うつ薬の使用が主体となります。

しかし、双極性感情障害では、気分安定薬の役割が重要となります。
気分を一定に保つため、抗うつ薬を使用しない治療法も検討します。

単極性うつ病と躁うつ病(双極性感情障害)では、治療法のみならず、対処法も異なることを知っていただく方が大切です。