当院では、小さなお子さんのADHDの診断を行っていません。
診断基準は、分かっています。
DSM-VおよびICD-10という国際基準の診断の手引きに書いてあります。
数項目の基準が当てはまるかどうかで判断できます。
できます、とはいうものの、実は、グレーゾーンはその診断基準だけではわかりにくいのです。
さらに、どのような部分に支援を行ったらよいのかという詳細も診断基準では得られません。
だから、得意な特性、不得意な特性を調べるための知能検査を行うことがあります。
当院で小児に積極的な診断を行っていない理由の1つは、知能検査も含めて、特殊な心理検査ができないため、それができる病院に紹介しなくてはいけないからです。
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大人と子どもの発達障害では、現れ方が変わってきます。
不得意分野を学習や経験で補うことができるものもあるのです。
小児時代にじっと座っていることのできなかった子も大人になると30分以上でも普通に座っています。
大人に対してADHDと診断するためによく行う質問は、
・あなたは小さい頃から忘れ物が多かったですか?
・もぞもぞと手足を動かすことが多かったですか?
・計画を立てるのが苦手ですか?
・詰めが甘くて間に合わないことが多かったですか?
などです。
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その他、別の判別法もあることに気づきました。
ADHDによる業務や家事の困難さは、ワーキングメモリーの少なさと大きく関係しているようです。
ワーキングメモリーとは、一度に覚えておける視覚・聴覚の記憶量です。
数字や文字、あるいは図形などでテストします。
実際、ワーキングメモリーの量が多くて得をする人は、写真記憶のできる人です。
いわゆる、テレビのクイズ王で出てくる人の中に必ずいます。
それはさておいて、大人のADHDを判別するために、独自の質問を紹介します。
ADHDの方には、かなりの確率で当てはまるように思われます。
それは、
「あなたは、マルチタスクは得意ですか?それとも苦手ですか?」
と言う質問です。
マルチタスクという言葉に解説が必要そうですが、知的障害のないADHDの方は、不思議なことに用語を解説しなくても、この言葉の意味を理解します。
そのため、大人のADHDの懸念のある方には、通常の診断基準としての質問に加え、最後に上記の質問を追加します。
詳細な知能検査まで希望されない方は、これらで概ね判断することができます。
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多くの支援が必要な人は、詳細な検査を行ってもよいと思います。
ただし、行わなければいけないという意味ではありません。
知能検査をしても結局、たいして役に立たなかったという実情も指摘されています。
そのため、知能検査で判断するよりも、困っている重症度を考慮した方がよいという実践的な意見もあり、私もその方が理にかなっていると思っています。