2014年8月31日
今年の立山は、天国か地獄か?

家族を説得して決行した立山黒部アルペンルートの旅。

お得なプランを申し込んだが、反抗期の息子が文句を言ったので、即キャンセル。
後で話を聞くと、「本当は行きたかった」という。
キャンセルした後に同じプランを見てみたら、すでにキャンセル待ちの表示が出ていた。

それから、もう一度、ツアーを探したら、値段はそれより高いが、満足するコースがあった。
空きがまだ十分にありそう。
それで、申し込んだ。

美しい景色を楽しみにして、しばらくすごしていたが、2週間ほどして妙なことに気がついた。
ツアーのほとんどに空きが十分あるにもかかわらず、早い日程のツアーは受付終了になっているのだ。

ああ、あれか!
最少催行人数に満たない場合のツアー取り消し措置なのか。

旅行会社に電話したら、案の定、集まりが悪い。
30人以上は募集がないと催行されないツアーで、まだ一桁の集まりしかない。
受付最終判断は、1週間後に迫っていた。

このままでは、まずい。
予定を立てたものの、空白になる可能性が極めて高い。
旅行会社の人も、この状態では、正直、催行は難しいでしょうと言われていた。

それで、別の旅行会社に問い合わせたところ、ここしかないというお日にちに席の空きはなく、難しいことが分かった。

いろいろ検索している内にたどり着いたのが、たまたまキャンセルの人が出て、残り少ないと表示の出た、白馬宿泊プランだった。
迷った末、結局、そのツアーに予約を入れた。

正直言うと、とても恥ずかしかった。
それは、最初にとってキャンセルしたものと同じツアーだったのだ。
お店には、迷惑をかけてしまった。

キャンセルは、権利ではあるが、使いどころを考えないといけないな、と反省した。

さて、お盆になって、待ちになった出立の日となった。
私の地はいなかなので、目一杯汲まれたツアーに参加するためには、前泊と後泊を要する。
3日のツアーであるが、現実には5日を要するのが難点である。

さて、最初の一日目は、目的地へ向かう時間が大半を占める。
折しも、お盆の帰省ラッシュが始まったため、バスは予定の北回りではなく、南回りを選択したらしい。
いろいろなコースがあるものだ。

そうこうしている内にお昼時に、信州に到着した。
途中、スイス村と呼ばれる道の駅で休憩をとった時、ラッシュの他にもっと危うい事態があることに気がついた。

スイス村では、そこを中心として、北に北アルプス山脈、南に南のアルプス山脈の景観が望めるらしい。
しかし、霧に煙った中に見える景色は、日常よくみる、普通の山ばかりだ。
本来は、もっとはっきり、山岳と分かる山の眺望を楽しむことができるらしい。

大変残念なことであるが、ここで一番の問題は、渋滞ではなく、「天気の問題」にすりかわった。

夕刻、白馬のホテルに宿泊した。
明日は、晴れてくれるのを祈るばかりである。
天気予想では、午前中は晴れ、午後は曇りか雨とある。

さて、迎えた2日目は、いよいよ立山黒部アルペンルートへの道である。
今回のツアーでは、黒部ダムの方から入った。

通常のバスや車は、黒部に入ることができず、その手前の扇沢という場所で、関電トンネルトロリーバスに乗り換える。
このバスは、電気で走るバスで、属性として、電車の部類に入るらしい。
排気ガスを出さないで、自然を破壊しないための方策だ。

そのトンネルを抜けると、黒部ダムに到着した。
黒部ダムは、その容貌をありのまま見せつけていた。
最初に訪れた時、ダムの上には砂利があって、石を上から落とすと、下に落下するまでにひどく時間がかかったのに驚いた。
それだけ高いダムだということに気づき、上から真下を見下ろした時には戦慄を覚えた。

しかし、すでに4回目のためか、その感動がない。
また、家族も案外、心を動かされてはいない。
昔、砂利道だったダムの上は、現在は、舗装されたアスファルトと砂利と土をセメントで固めた通路に変化していた。

後で考えたのだが、人間が造ったものとして、予算や労力は、ダムよりは少ないが、それでも巨額な投資を行った高層ビルに何度か訪れたのが、感動を薄らいだ原因の一つかもしれない。
それでも、黒部ダムは全容を見せてくれた。

次に向かった乗り物は、ケーブルカーである。
黒部湖から400mほど上がった位置にある。

そこで、大変残念な事実に遭遇した。
雨が降っている。

この高度で雨があるとなると、次の上を目指すケーブルカーでの景色は絶望的である。
実際、ケーブルカーの案内には、「悪天候」というモードに設定された案内を流していた。
ケーブルカーが降りた地は、大観峰といい、さえぎるものがなければ、黒部湖を抱えた山々を見下ろす絶景ポイントである。
それも、水のたまった展望台では、望むべくもなく、まったく霧中にあった。

大観峰からは、立山の中をくりぬいたトンネルで、向こう側に渡る。
ここは、トロリーバスで抜け、ルートとしては最高の2,450mに位置することになった。

ここで、昼休憩をとり、散策したり、展望を楽しむはずが、大粒の雨と霧に包まれた中では、外に出ようという気すら起こらなかった。
楽しい時間がつらい時間として、ずっと待つだけである。
つらいのは、あぶれた人達がどこにも行けないため、椅子を占拠され、ゆっくりすることもお弁当を食べることもできないことも関係している。

さて、本来はたっぷりとってくれた時間をもてあましながら、たまたま空いた席に座って弁当をむさぼった。
食うことと座ること以外、やりたいこともなかった。

山は、美しさを出してくれない時、代わりに苦痛を提示する。
自分に選択権はない。

そうして、帰りのバスに乗った。
バスで50分ほど下って、美女平という停留所に降りると、そこに雨は少なくなっていた。
ただし、周囲に存在するのは、普通の山の景観だけであった。

面倒なことに、美女平から、立山駅に下るのは、ケーブルカーである。
満員の中、ぼーと立っているのも、これまた軽い苦痛である。

そうして、信州2日目のダイナミックパノラマは、みごとに打ち砕かれることとなった。