この回では、不幸になる別の方法について論じます。
私の頭にある妄想的な考えかもしれませんから、そういうこともあるのかな、というメルヘンチックにお読みいただけたらさいわいです。
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登場人物紹介
講師
一文字浩介
地方の準難関大学卒であるが、なぜか帝国大学の講師をしている
心理学者の若手
興味は豊富で、多彩な知識を持つが、まだ何も大成していない
学術とは変わった認識を持つ
言葉使いは、ていねいだが、少し変わり者
生徒1
橘涼香
元、理系女子
宇宙など、壮大なものにあこがれる
宇宙物理学科を目指し、大学受験では合格できるレベルにあったものの、研究に残ることができる者は、ごく一部の天才だけと知り、人文科学を専攻する
気丈な性格といえる
生徒2
円山由貴子
文系女子
ふくよかで、穏やかな才女
彼女の優秀さは、時にかいまみられる
感性豊かな性格
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一文字:世の中には、不幸になる言葉使いと考え方があります。
前回は、特定の言葉を中心にお話しました。
今回は、幅が広いですが、自分の感情と思考から発する言葉使いについてお話します。
では、実際に、どのようなことを言うことが運を悪くするか、考えてみて下さい。
円山:マイナス的な発言をすること。
橘:人の揚げ足取りをするような発言をすること。
一文字:その通りです。
他にもありますか?
橘:うーんと、人の悪口やグチを言い続けることですね。
一文字:そうですね。これは、確実に運が悪くなります。
自分の気が萎えてしまうことが1つ。
それに他人に嫌われます。
人から嫌われ続けて人生がよくなった例をぼくは知りません。
円山:先生は、グチを言うことがどのように左右すると考えますか?
一文字:グチは、一時的なストレスのはけ口となります。
1回、グチを言って、その後の対処が変わるなら、意味があります。
しかし、変わらない状況に対して、同じ内容のグチを言い続けることは、確実にそれを言った人の人生を悪くします。
橘:どうして、そのようになるのでしょうか?
一文字:グチの特性にもよります。
一般にグチは、「自分が悪くない」と思う時に語られます。
実際、そういうこともあるでしょう。
しかし、自分の正当化していくことを続けると、自分だけが世間と乖離(かいり)します。
世離れしては、個人の向上には役立たないのです。
円山:先生は、グチについて、どう思いますか?
一文字:マイナスのオーラを発することです。
だから、私は、同じグチを何度も言っている方に言います。
「あなた、だれそれが悪いと言われています。その言葉を一番聞いている人は誰ですか?」
橘:問われた人は、どのように答えますか?
一文字:何も答えないことが多いでしょう。というより、即答できない?
それで、ぼくは言います。
「グチはね、それを言っている本人が一番よく聴いているのですよ。そして、自分は悪くない、人が悪いと洗脳します。その結果、『自分はそれでいい。自分は変わらなくていい』という錯覚にとらわれます」
円山:言われたクライアントは、どう反応しますか?
一文字:少し考えて、そうですね、という人と納得しない人に分かれます。
橘:納得しない人は、どうなるのですか?
一文字:自然に来なくなることがよくあります。
それから、ぼくが、別のカウンセラーを紹介することがあります。
橘:えー、別の方を勧めるのですか?
一文字:はい。
橘:そんなことをしてもいいのですか?
一文字:では、逆の立場から言わせてもらうと、そんなことをしたら悪いのですか?
橘:えー?
一文字:ぼくは、自分がよくなりたいと願う人しかよくすることができません。
だから、やる気を出すことのできる優秀なカウンセラーに診てもらった方がよいと考えているのです。
あるいは、グチを聴いてほしい人は、それを聴いてくれるカウンセラーが適しています。
橘:それは、どのようなポリシーによるものでしょうか?
一文字:「ぼくは、やる気のない生徒にやる気を出させるほど、優秀なカウンセラーではありません」
だから、他の適切な人に委ねるのです。
円山:何か、聞いたことのあるようなセリフですね…?
一文字:のだめカンタービレで、落ちこぼれ専門教師が、「のだめ=野田恵」をハリセン教師に託す時の言葉です。
橘:なるほど!覚えています!
のだめが、ラフマニノフピアノ協奏曲を奏でているのを聞いたハリセン教師が興味を示してからの話ですね。
おなら体操も作曲しますが。
一文字:すごく久しぶりに橘君とわかり合えた気がします。
出典:二ノ宮知子 作、講談社、フジテレビ
それに、ぼくの特殊カウンセリングは、「自分がよくなりたいから、自分も工夫する」という意欲のある人にだけ効果を発揮する手法なのです。
やる気充電法ではないのです!
円山:なるほど!
一文字:ぼくの特殊カウンセリングは、たいていの人が、これまで聞いたことのない話をするので、聞く気のない人に話しても意味がないのです。
円山:そういうものですか。
…しかし、考えてみると、先生からの質問は、私が聞いたことのないこと、知らなかったことがすごく多いですね。
君が代が和歌だとか。
一文字:そうでしょう?
それを一緒に楽しんでいける人にカウンセリングをしたいのです。
その方のニーズとぼくの能力とが一致する部分です。
橘:そうか。先生にも存在意義があったということですね。
一文字:そう思っています。
ちなみに、橘君、その言葉はクライアントには言わないようにしてくださいね。
自分は存在意義がないと思っている方が多いですから。
橘:……はい。分かりました。
円山:私は、先生の特殊カウンセリングの内容を知りたいです。
橘:……
一文字:それは、おいおいね。
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グチを言い続けると、どんどん運を下げることになる
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