日本の列車はとても時刻に正確である。
こんなに強迫的に時間にこだわっている国はないと言われている。
インドでは、昼の待ち合わせに、相手が夕方になって現れることもしばしばだと聞いた。
さて、ジュネーブからフランスに至る新幹線に乗る前、
現地のガイドさんに言われた。
「ここは、ジュネーブだけど、乗り場に入ると、そこはもう『おフランス様』なのよ。
おフランス様では、日本と違うと思ってね」
ガイドさんは続ける。
「列車に乗った時、チケットに8号車の45番と書いてあったとしますよね。
そのチケットを頼りに、座席を探しても一向に見つからないことがあります。
つまり、45番という席はなくて、それはチケットを発券した係員の間違いだったりします。
そういう時に車掌さんに文句を言ってはいけません」
日本流の考え方では、「えっ?なぜ?」と思うことだろう。
「車掌さんは、チケットを発券した人とは関係がないの。
つまり、手配ミスは車掌さんの責任ではないのですよ。
だから、それを責め立てると、車掌さんは、プイと怒って話をしなくなるかもしれません」
…ああ、あるほど。それは、確かにその人の責任ではない。
日本では、組織での連帯責任を求める傾向にある。
「そういう場面に出くわしたら、怒ったり、慌てたりせず、
空いている席に座っていてね」
(はい)
「そうして、車掌さんさんが間違いを見つけたら、代わりの席を用意してくれますからね。
同じ2等車に席がなければ、1等車になるかもしれません」
そういう話を聞いて、私たちは、ほんのちょっとの覚悟を決めた。
日本のように正確さを求めない。
相手を責めない。
異文化に触れることで、日本の文化を再確認できる。
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今回の教訓
個人のミスと組織のミスを混同しない方がよい。
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