2020年7月30日
躁うつ病の解釈と治療法の変化

以前、うつ病と躁うつ病は、感情障害として、同じカテゴリーとして扱われていました。

しかし、十数年前から、うつ病と躁うつ病は異なる病態として理解した方がよいのではないかという理論が提案され、しだいに普及していきました。

最新版のアメリカの精神疾患の診断基準のガイドラインであるDSM-5では、躁うつ病(双極性感情障害)とうつ病を別のカテゴリーの病気として取り扱っています。

日本の公式機関で採用されているICD-10という国際診断基準では、同一カテゴリーのままですが、もう少ししたら、発行される改訂版のICD-11でも変更がありそうです。

こうした病気の解釈に伴い、治療法も変化しています。

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うつ病の治療については、進化を目指す方向と解釈しています。

しかし、双極性感情障害(躁うつ病)の治療は、本質的な変化をもたらしています。

例えば、躁うつ病で患者さんが悩むのは、主に「うつ状態」の時期であり、軽い躁状態の時は気分もよく動くこともできるので、治療が必要とないと思うケースによく出会います。

そういう病状に対し、あるパーセンテージの方は、

「うつ状態の時期に抗うつ薬を投与するのではなく、
 躁状態にならないように気分安定薬を使用する」

この方が効果的なことがあります。

落ちた気分を上げるのではなく、気分を落とさないよう、そして一定の範囲内で留めるようにする治療法です。

また、気分を安定する薬の使用例では、抗てんかん薬による気分安定作用を行うこともありますが、抗精神病薬で調整する例が増えています。

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こうした変化は、1つは経験則によります。

しかし、それだけではありません。

遺伝子研究によって解釈を変えた方がよいと考える側面もあります。

躁うつ病(双極性感情障害)は、複数考えられている統合失調症の発症に関係する遺伝子と同じものを有することがあります。

一方、うつ病については、統合失調症の遺伝子との明確な相関関係は、証明されていません。

こうした経緯により、治療法も変化しているのです。

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参考文献の一例

【原文を読む】
Rhee TG, et al. 20-Year Trends in the Pharmacologic Treatment of Bipolar Disorder by Psychiatrists in Outpatient Care Settings. Am J Psychiatry. 2020 Apr 21. [Online ahead of print]