2020年1月26日
動物君たちとの暮らし3

ダンプ君の猛追

狭い世界しか知らないオス猫、マー君。
兄弟ネコで一番強かったのかもしれません。

人間がネコに懲罰を与えることもできます。
しかし、大きな力を持った者が成敗するのは気が引けます。
手っ取り早い話では、マー君を出口のない場所に入れ込んで、兵糧攻めにすることも容易にできます。

でも、そんなことをするなら、ネコを飼う必要もないし、また飼う資格もありません。

それで、目には目をではありませんが、同種の者を使わせることにしました。

動物君に、別の動物君をあてがうことでした。

マー君を連れて行った2階には、アイちゃんという狩猟犬が住んでいます。
彼……じゃなくて、彼女は、荒っぽい気性で、猪突猛進してきます。

飼い始めた時、乳歯で私たちを噛みまくって、小さな出血を大量に発生させました。
後に、犬の飼い方の指導をしている人のDVDを購入して、何度か観た後、それを実行したところ、かみ癖はおさまりました。

また、人を噛むより、なでてもらう愛情を感じることに喜びを見いだすように変革したら、思いっきり、甘ったれ犬になりました。

成犬になっても心は仔犬のままです。

そのアイちゃんの元にマー君を運んでいったのです。

さみしがり屋で退屈屋のアイちゃんは、マー君の姿を見ると、目を輝かせました。
そして、マー君の元に突進していきました。
マー君は、とっさに逃げます。

その逃げるマー君をアイちゃんがさらに追いかけます。
マー君は、冷蔵庫の隙間に隠れました。
それでも、アイちゃんは、顔を突きつけます。

「フー」と息を吸って膨らませて怒る仕草をマー君は行いました。
でも、アイちゃんは、それにお構いなしです。

アイちゃんの体長は、マー君の2倍くらいはあります。
体長と体重の相関関係は、2倍ではありません。
3次元ですから、2の3乗 = 8倍近く違うのです。

マー君は、まだ軽い。
体重1kg少々か。
一方のアイちゃんは、10kg近くあります。

自動車でも、普通クラスの乗用車が、ダンプカーにはまされると、圧迫感を覚えます。
それと同様の感じかもしれません。

実際、アイちゃんが追いつくと、マー君は、アイちゃんのお腹の中に隠れてしまうほどです。

巨大なダンプ君のようなアイちゃんが、巧にマー君を追いかけます。
実は、アイちゃんは、太っているため、ダンプのような、あるいはタンクローリーのような体躯をしています。

しかし、ミニシュアという狩猟犬は足が長く、反射神経もよいため、獲物を追いかける能力に長けているのです。
この犬種は、ペストが流行った時代にネズミを捕獲するために中型犬のシュナウザーと他の犬種をかけ合わせて作ったという話があります。

捕獲目的で作られた犬のため、顔が入る程度の隙間は躊躇なく追いかけ、追いつめます。

ネコの動きがすばやいことは知られています。
子猫といえども、忍び足も使えるし、早く走ることもできます。

そのネコに対し、アイちゃんは、負けじと追いかけているのです。

マー君が狭いベッドの下に潜り込んで、一息ついたと思ったら、大柄なアイちゃんが、お尻をふりふりしながら、ベッド下にも入ってくるのです。
そうして、逃げ場がないところに追い込み……囲い込み、目の前に立ち塞がるのです。

被害がないように当初、注意深く、追いかけて観察したところ、追いつめた後は、まっすぐ目を見すえて、鼻でクンクン匂いを嗅いでいます。

一番懸念したのは、ネコを噛むことでしたが、それはありませんでした。
追いつめた後は、やはり立ち止まって、匂いを嗅いだり、舐めたりしていました。

人の足の親指ほどの大きさのある牛の骨をガリガリかみながら、砕いて食べるのですから、本気でかみついたら、子猫は、血だらけの致命傷を負います。
その点に注意しながらみていました。
噛まない訓練をした甲斐があったのだろうと思っています。

アイちゃんを野生のまま野放しにすると、私たちも手負いをおっていたであろうし、ましてやネコと生活できるはずはありません。

アイちゃんは、マー君を追いかけて、その度に角に追いつめました。
その追い込んだ後、何もせず、「パパ、追いつめたよ」と報告しにきているように感じる場面が何度もありました。

日本の猟犬は、自ら獲物をかみこんで捕獲する性質があるそうです。
しかし、西洋の犬は、獲物を追いつめ、最後は主が仕留めるように算段する性質を持っていると、YouTubeで人気の犬のトレーナーが語っていました。

明智光秀のように天下を取ったと思っていたマー君は、アイちゃんという存在によって、3日天下に終わりました。

ただし、光秀とは異なり、殺されることはなく、共存しています。

今後、マー君を1階に住まわせるか、2階に住まわせるか、私たちは迷うことになりました。