一般にうつ病は、ゆううつ気分を引き起こす疾患として知られています。
しかし、病歴や症状を詳細にお聞きすると、
「うつ病ではないうつ症状」
が存在することに気がつきます。
その1つが、躁うつ病(双極性感情障害)です。
躁うつ病では、気分の低下だけでなく、気分の高揚もみられます。
躁状態が強い場合は、
・せっかちとなる
・怒りっぽくなる
・自営業者や経営者では、事業を広げたくなる
・買い物やギャンブルが増え、無駄遣いが多くなる
・他者とのケンカが多くなる
・活動性が高まって、眠る時間が少なくなる
・自尊心と万能感が高まる
・一時的に妄想が出現することがある
などの症状がみられます。
症状の強い躁状態は、他者からみても明らかな違いを感じます。
・双極性II型障害の存在
一方、明らかな躁状態に気づきにくい躁うつ病もあります。
一時的にテンションが高くなる、軽い躁状態がいくらかの期間続き、活動性が高まります。
この時、仕事や用事がはかどるため、自分では困った自覚症状はありません。
また、他者からみても分かりづらいことがあります。
しかし、一定期間の躁状態を経た後、急速に活気を失い、うつ状態に転じるケースが多くなります。
こういうケースでは、活動できている間は困っていないため、受診されないことが多くなります。
エネルギーが枯渇して、気力がなくなったとき、うつ状態として、来院されることが大半です。
そのため、単極性うつ病か、双極性II型障害か区別しにくい、あるいは気がつかないケースが増えます。
これは、後の述べる治療指針に違いに関係するため、見分けていくことが大切になります。
・新しい疾患分類では、うつ病と双極性感情障害は、別のカテゴリーとなった
これまで長い間、うつ病と躁うつ病(双極性感情障害)は、「感情障害」の疾患として、同じカテゴリー分類におさめられていました。
しかし、最近になって、最新版のDMM-5(アメリカ精神神経学会での疾患分類)にて、別のカテゴリー(疾患として、別の章)に分類されています。
日本で国際分類として使われているICD分類は、現在、10版から11版に30年ぶりに改訂されます。
ICD分類は、WHO(世界保健機関)が提唱する診断基準です。
・うつ病と躁うつ病(双極性感情障害)では、治療法が異なる
うつ病の治療は、薬物療法では、抗うつ薬の使用が主体となります。
しかし、双極性感情障害では、気分安定薬の役割が重要となります。
気分を一定に保つため、抗うつ薬を使用しない治療法も検討します。
単極性うつ病と躁うつ病(双極性感情障害)では、治療法のみならず、対処法も異なることを知っていただく方が大切です。