2019年6月14日
自閉症様行動に運動が有効な可能性があります

 東京大学は6月5日、自発的な運動が自閉症モデルマウスにおける自閉症様行動と、脳内シナプス密度の増加を改善させることを発見したと発表しました。
この研究は、同大大学院薬学系研究科の小山隆太准教授、安藤めぐみ大学院生、池谷裕二教授らの研究グループによるものです。

「Cell Reports」に6月4日付

ムダなものを刈り取ることの重要性

自閉症は、生活の質を損ねます。

しかし、その根本的な治療法も確立されていません。
上記の研究は、運動が自閉症の治療に有効である可能性を検証したものです。

マイクログリアは、発達期にシナプスを貪食してシナプス密度を制御し、正常な神経回路の構築に寄与することが示されてきました。

発達期のシナプス刈り込みにおいて、マイクログリアは神経活動が相対的に弱いシナプスを貪食することが示唆されています。そこで、顆粒神経細胞の活動上昇がシナプス貪食を促進させる可能性を検証しました。

一部の顆粒神経細胞の活動が上昇したことで、シナプス活動に強弱が生じ、マイクログリアが活動の弱いシナプスを貪食した可能性が考えられました。
自閉症の発症や治療にマイクログリアによるシナプス貪食が関与することが示唆されました。
(QLifePro 医療ニュース2019年6月10日 (月)配信 より一部引用)

補足とトリビア

新生児の脳神経細胞は、成人より数が多く存在します。
幼児期に必要のない神経細胞や弱い神経細胞が刈り取られます。

音楽の音階が分かる絶対音感は、小児期以降は、身につかないことが分かっています。
これは、小児期までに身につけた絶対音感にかかわる脳神経細胞は、残され、他の必要のない細胞が刈り取られる(間引きされる)ことと関係があると考えられています。

人の手足は、胎児の初期段階では、グルーブ状になっています。
それが、発達の段階で、先の細胞が規則的に間引きされるため、5本の指が形成されます。
この細胞の間引きは、アポートーシス(細胞の自死)として、個体を守るために獲得した仕組みと考えられています。

高齢者も散歩することが、脳の機能によいことが知られています。
散歩することで、脳の活性化が行われると説明されることが多いでしょう。

ここから先は、まだ証明されていないことですが、高齢者が運動をすることで、認知症予防になる理屈とも関連しているかもしれません。
運動によって、結構な脳神経細胞を活性化させるとともに、異物の蛋白に犯されたシナプスや神経細胞を除去しているのかもしれません。