先日、ニュースを聞きました。
回転寿司のチェーン店が、人件費の高騰に耐えきれないで、倒産したという話です。
私は、いずれは、こういう出来事が起こると踏んでいました。
といいますのは、人件費を上げてまで利益をとっていける企業は、それほどたくさんないからです。
人件費を上げてもやっていける場合は、これまでに利益が出ている企業のみ。
赤字企業で行うと、赤字を増やすばかりです。
人が足りなくて倒産。
でも、人を入れても倒産。
ならば、ビジネスモデルが破綻しているということです。
大手のスシローなどは、人の代わりに大量にシャリを握るロボットを何台も導入しているそうです。
これもまた、経費のかかるものです。
大量仕入れと大量販売がないと成り立たないモデルです。
いくらか前、焼き鳥で人気の「鳥貴族」が、原材料費などの高騰に耐えかねて、少し値上げしました。
それほど影響ないと高をくくっていたようですが、実際のところ、ハッキリと売上が下がりました。
結果、戦略的に読み間違えたようです。
高価格バーガーを出して経営回復したマクドナルドも、安いバーガーを同時に出して、客離れを防ぐようにしています。
マクドナルドは、日本は、デフレであると見做していると、ある評論家は述べていました。
現在の日本が人手不足で、賃金が上昇していくことは理解できます。
ところが、その賃金上昇の裏付けが、人手不足だけでは、経営が続かないのです。
高い人件費を払って雇用した結果、売上が増え、収益が上がらないと、この人件費の上昇は一時的な相関係数にしかならないのです。
何がいいたいかというと、人件費が上がった分、それが価格に転嫁され、それでも人が買わざるを得ないという状況が不可欠なのです。
これは、何を意味するのか?
日銀や政府がよく口にしている、
「インフレが起こらなければ、賃金の上昇は続かない」ということです。
デフレのまま、賃金が上昇しても、体力のない会社から廃業ならびに倒産となり、結果、人が余って、賃金上昇が抑制されるわけです。
この先、ヘリコプターマネーが導入されて、本当にインフレになった場合、賃金の上昇は、すんなりと受け入れられるでしょう。
その代わり、物価が上がるわけですから、生活が楽になるとは限りません。
むしろ、年金生活者など、収入がギリギリの方は、塗炭の苦しみを味わうかもしれません。
さらに、インフレだと金利の上昇が避けられませんので、住宅ローンを中心とした不動産による大量の破産者が増産されると考えます。
人が足りなくて、賃金が上がるのは、一面だけの見方です。
多面的にみると、必ずしもそれが続くとは限らない、あるいは、別の不利益を被る可能性があることを知って備えていた方がいいのです。
とはいえ、今日の話は抽象的で分かりにくいと思われる方もおられると思います。
賃金の問題ではありませんが、最近のロシアの例について考えてみます。
現在、ロシアのルーブルは、ドルに対して、下落しています。
先日、トルコリラが大幅に下げて、政策金利も上昇したことをご存じでしょうか?
通貨安になると、金利を上げて、防衛しないと、他国と比べて貧乏になるのです。
円安を喜んでいる日本人はしあわせです。
国が貧乏になって、うれしいと言っているのと同じですから。
本当の通貨安は、インフレと物を買えない貧乏に陥り、よいものではありません。
インフレとは、昭和の日本が経験したように、物価が上がりますので、オイルショックというと、トイレットペーパーが瞬間に売り切れたのと同じような現象が起こるかもしれません。
現在、ロシアで起こっていることは、腐らないもの、例えば、冬の衣類などは、安い内に余分に買い込んでおけ、という行動です。
インフレですので、時間が経てば、すぐに値上がりします。
でも、給料はいきなり増えることはありませんので、「安い時に買っておけ」なのです。
日本の今後は、いくつもの分岐点がありますので、本当のところ、どうなるのかは分かりません。
数パターンを想定して、大きなリスクはとらないようにした方がよいのではないかと私は考えるのです。