売れっ子になっても、安月給で働かされているタレントがおられます。
ずいぶん、昔の話になりますが、キャンディーズという3人の女の子のグループが、一世を風靡しました。
寝る間もほとんどないくらい、忙しく仕事をしていましたが、給料は、安いサラリーマンと変わらないという話を聞いて、衝撃を受けたことがあります。
後に、キャンディーズは、
「普通の女の子に戻りたい」と言って、人気絶頂期に引退することになりました。
さて、今回は、人気のある芸能人が安月給で働かされているのは、不当だから、芸能人の移籍を自由にしようという法案が出ていることに関する考察です。
同様の問題は、日本のプロ野球で活躍している選手の海外移籍について、議論され、一応の目安はついています。
ただ、芸能界の場合は、野球選手と異なり、必ずしも実力で評価することことができないため、同じような枠作りを行うとすると、混迷を極めます。
芸能界の世界では、人気が出て、稼ぐことができるタレントは、ごく一部です。
もちろん、プロ野球界においても同様でしょうが、1つ大きな差があります。
野球では、「素質を見分ける」ことができることに対し、芸能界では、「どの人、どのタイプの人が流行るのかが分からない」という事情があります。
芸能プロダクションは、多くの人材を抱え、売れないタレントには、赤字を出し、売れた芸能人から利益を回収するシステムとなっています。
ここでの問題は、「売れないタレントの方が圧倒的に多い」ということです。
そのため、売れるタレントに対して、売上に見合った報酬を出すと、事務所の経営が赤字となり、運営を続けていくことができないことになります。
ですから、芸能人の移籍をそのまま受け入れると、多くの芸能プロダクションは、赤字芸人を切る、あるいは、採用を控えるという風になって、登用の入り口を極端に狭くするしかありません。
なぜなら、せっかく時間とお金をかけて売れたタレントがいなくなると、一気に収益が悪化して成り立たなくなるからです。
移籍制度ができた場合には、儲かるかどうか分からないタレントよりも、収益を確実にとることができるタレントの争奪合戦が始まることでしょう。
売れていないタレントは、見向きもされません。
また、プロダクション側も、新しい目を発掘する気力が萎えてしまうかもしれません。
そういう意味で、タレントがプロダクションに搾取されていると思われている事情も一理の分があるのです。
タレントに長期契約を結ばせて、売れても長い期間、低収入にするという仕組みは、プロダクション側が生き残るための方策です。
ただ、私は、こういう事情を与しながらも、タレント移籍を実現する別の方策があるのではないかと思っています。
それは、移籍したいタレントがいて、受け入れ先のプロダクションがある場合は、他の芸能人の分まで合わせて、元が取れるくらいの高額の移籍料を支払うことです。
そうすると、移籍元と移籍先が提示する金額が一致すれば、移ることができます。
ただし、移籍元のプロダクションは、高額な移籍料を請求する可能性があるため、交渉がうまくいくかどうか分かりません。
結局、移籍した芸能人は、あまり得をしないかもしれません。
これは、現在のところ、未知数であります。
それにしても、プロダクションを離脱するタレントを「干す」という行為は、容認できないところはありますね。
以上の状況が起こりうる可能性を考慮し、移籍が出来るという法律ができた場合に、業界がどう動くかということに興味はあります。