今や、小さな企業でも持っているHP。
医療機関でも、以前は大きな病院は標準だったが、最近では、小さな診療所でも持っていることが多い。
ネットの威力は、バカにならないくらい大きい。
ホテルや旅館は、事業規模が大きいから、自社HPをから必ずと言っていいほど持っている。
(例外あり:創業300年の老舗、京都の俵屋旅館には公式HPがない。
先日、その俵屋旅館を体験することができたため、折を見てレポートしてみたい)
HPがあると、集客できるとは限らないが、ないと不利になる。
有名になって、他のサイトが勝手に宣伝してくれたらいいのだけれど、世の中、そんなに甘くはない。
自社HPを持つ一番の利点は、自社の発信したい内容を示すことができることだろう。
逆にそうでなければ意味がない。
最近は、様々なホテルや旅館が旅行代理店を通してだけでなく、インターネットによって予約が可能になっている。
自社HPを持つホテルや旅館は、そうした予約システムを導入している。
そうは言っても、世の中、自社のHPに訪問してくれ、そこで予約してくれるとは限らない。
放っておいても口コミで埋まるならともかく、稼働率を上げなければ存続が成り立たない。
だから、JTB、るるぶ、じゃらん、一休など様々なネット会社に広告してもらうことで予約を入れようとしている。
しかし、ここで少々困った問題を抱えることになる。
広告会社に掲載してくれるだけで予約客がとれればいいのだけれど、正規料金では客が埋まりにくい。
現在のGW期間やお盆、正月などは高い値付けでも埋まるとしても、平日に満室をもらうことは大変難しい。
そのために行うのが、安売りである。
人は、自分のほしいものが、自分の想像するコストパフォーマンスより高いと値段を安く感じる。
東京リッツ・カールトンのクラブフロアが1室10万円なら歯牙にもかけないが、6万円に根を落とすと、一生の思い出に泊まってみようという人が出てくる。
1泊15万円の高級旅館が10万円を切ると、お得感を感じる。
求めるレベルは人によって変わるため、1泊1万円のホテルが6000円なら安いと思うなど、人によってニーズは変わるだろう。
自分にとっての価格の適性度は変わるだろうが、私が人に、
「東京のホテルオークラを2人で12000円、1人あたり6000円でとりましたよ。東京では、平均的なビジネスホテルより安いでしょう?」
というと、話を聞いた人の多くが驚いてくれる。
ホテルの安売りは、本質的には航空チケットと似たような性質のもので、空席にして飛ばすよりは、安くても埋めておいた方がいい、という理屈に基づいている。
ホテルと航空機が異なるのは、航空機は、早く取るほど安く取れ、直前の安売りはない。一方、ホテルでは直前割がある。
さて、話を元に戻していく。
ホテルや旅館が空室を埋めるために、広告会社に宣伝してもらう。
それで客が入れば、誰も来ないよりはいい。
しかし、いくつかの点で損をしている。
1 本来の値段よりも安くしているため、利益が薄くなる
2 客が安さになれると、その安さがその客にとっての標準となる
3 宿泊を確保した広告サイトに手数料を払わなくてはならない
今回、注目したいのは、広告会社への手数料である。
安売りをしようがしまいが、広告会社がとった客が宿泊すると、その会社に対して手数料を払わなければならない。
広告会社もそのための手間と費用をかけているのだから、当然のことだ。
私が調べた一部の情報であるが、ネットが中心のじゃらんで手数料は8%くらい。
リアル店舗を持つJTBだと15~20%という話である。
(同じJTBでも、ネットでとると、それよりは安いであろう)
旅館にとって悲劇なのは、元々安い料金の上に、利ざやを抜かれること。
ならば、自社HPで予約した場合を最安値にしたらどうかと考える。
しかし、そうしている会社は、現在、ほとんどないことが現実だ。
私は、一部のホテルで、「当サイトで予約するのが一番安い値段となります」と明言しているところを知っている。
そして、その言葉が本当かどうか、いくつかのサイトを検索して検証してみた。
その結果、明記しているところは、調べた限り、その通りであるようだ。
しかし、多くのホテルや旅館のHPを検証してみると、同じ旅館を別のサイトで予約した方が安くとれるケースが多い。
しかも、広告会社で宿泊予約すると、ポイントがつく。
つまり、自社サイトは、そのポイントの分も含めて値引きしなければ太刀打ちできないわけだ。
しかし、サイトを見比べながら予約している客に有利に見せるためには、やはり自社での予約を最安値にした方がいい。
広告に支払う手数料より少なくてもいいから、安く見せる工夫をした方がいい。
簡単な理屈であるが、手数料を抜かれずに自社での予約を最も有利にしているホテルや旅館がめったにない。
自社で安売りをすると、傷がつくと思っているのだろうか?
これも宿泊施設が持つ大きなジレンマかもしれない。