2016年4月11日
人類の叡智の危機

日本で話題になっている囲碁会で初めての全冠制覇なるか?

その間に、世界では、驚くべき実戦が行われていた。
この決戦のため、本来なら湧くはずの井山裕太6冠の活躍が霞んでみえてしまった。

それは、Googleが開発したAlphaGoという人工知能(AI)が、人類の最強棋士に勝負を挑んだからである。
相手は、韓国の李セドル9段。
プロ棋士にもその時の旬があるが、李9段は、井山6冠にも勝利しており、人類の中でもトップレベルにあることは疑う余地がない。

この強敵に人工知能(AI)が5番勝負を挑んだ。

初め、李9段は、将来は分からないが、現時点においては、人間として、1つの負けを喫した場合でも、自分の敗北であるという発言をしていた。
現実、チェスでは20世紀に世界チャンピオンを倒しており、近年では、将棋界においても人工知能が将棋のプロに勝ち越している。
囲碁は、選択できる手数が圧倒的に多いため、正直言って、人工知能がプロに勝つのは10年先だと言われていた。

それが、最近、ヨーロッパのプロに人工知能が勝ったという報告が入っていた。
そして、この度は、トップ棋士との真剣勝負である。
5番勝負であるから、3勝したら、勝利が確定する。

内心、多くの囲碁を行う人間は、今の段階で、人工知能が人類のトップに勝つことはできないだろうと思っていた。

しかし、蓋を開けてみると、第1局で、李9段の敗北。
そして、2局、3局と連続して3連敗をしてしまった。
この時点で、勝負そのものは、人間の負けである。

4局は、最強かつ意表の一手で、李9段初の勝利となった。
同時に、ある状況下においては、人工知能は、もろく、無意味な手を指すということも露呈した。
そして、迎えた最終局は、人工知能が勝利した。

人間側で見ると、1勝4敗。
人類の叡智がAIに敗れた瞬間だった。

一方、コンピューターを使うことで、今まで「ない」とされてきた手が「ありうる」と見直されたし、序盤の可能性の広さが確認された。
その人の受け取り方によって、囲碁を否定的にみた人もいるだろうし、可能性の大きさに喜んだ人もいるだろう。

いずれにしても、この対局は、井山6冠の対局より多くに人の関心が向かった大きな大きな対局であった。