2019年1月10日
長期政権になると、官僚の力が弱くなる

東大を出た人が就職する先は、官公庁が多いことが知られています。

そのことを前提として、官公庁でない所に就職することを、「民間就職」と呼んでいます。
最近は、その民間就職が増えているという話です。

元々、霞ヶ関の役人は、「総理大臣」の言葉を真に受けていませんでした。
自省の当該大臣も当然のことです。

理由は簡単です。
事を荒立てずに適当にあしらっていたら、ほどなく、首が変わっているからです。
海外からも、日本の総理大臣は、コロコロ変わるから、名前を覚えられない、という批判がありました。
その通りだと思います。

私は、アメリカ大統領の名前を日本の総理大臣以上に覚えています。
別に、愛国心に乏しいわけではありません。

アメリカ大統領の任期は、罷免や退職がなければ、1期4年あります。
これだけでも、日本では、長期政権です。

現在の安倍総理を除いて、近年で最も総理大臣の履歴が長かったのは、小泉純一郎氏でした。
それでも、総理大臣の在職期間は、5年半ほどです。
(2001年4月26日〜2006年9月26日)

アメリカ大統領は、2期まで可能なので、在職期間が8年の大統領がかなり存在しています。
アメリカは、世界の覇権国でありますが、それだけではなく、在職期間が長くて、メディアに何度も登場しているから、自然に覚えてしまうのでしょう。
私のような政治オンチで記録力もさほどでない人間でも、アメリカ大統領の名は、1981年に誕生した、ロナルド・レーガンからはすべて覚えています。
すべてと言っても、現在のトランプ大統領を含めて、6名しかいないのです。

われわれ日本人は、その時の首相は覚えていても、過去の話をすると、「そう言えば、そんな話もあったっけ」とか、ひどい場合は、「そんな総理大臣聞いたことがない」なんて話もあります。

2回総理大臣になったにも関わらず、合わせて1年少々の任期しかなかった、森喜朗元首相は、スポーツ振興で名前が出なければ、世間から忘れられていそうな存在です。

他に、

1 羽田牧   64日(1994年4月28日〜1994年6月30日)
2 石橋湛山  65日(1956年12月23日〜1957年2月25日)
3 宇野宗佑  69日(1989年6月3日〜1989年8月10日)

なんて記録もあります。
1956年という時代は古いため、生きていない人も多いと思いますが、この30年に限っても、超短命内閣が2名。その他、短命内閣は数々あります

今世紀になって、民主党に政権が変わった時代があります。
その時の最初の総理大臣は、鳩山由紀夫氏であります。
ただし、氏の在職期間は、262日で歴代政権では、ワースト5となっています。

全体として、日本の政権が短すぎるという弱点があります。
短すぎて、実務を行っている者に影響力を持たないのです。
日本の政治を動かしているのは、国会議員や大臣ではなく、「官僚」というわけです。

それを改めようとする政治家が多くいましたが、うまくいきませんでした。

今回の安倍政権の前に長期政権として君臨したのが、小泉政権でした。
その頃は、正直言って、役人もひやひやしたようです。

ところが、小泉政権は、「郵政の民営化」に傾倒したため、他の省庁の改革まではできませんでした。

その頃、胸をなで下ろしていたのが、財務省です。

ところが、今は、安倍政権が長期化しています。
自民党総裁の任期は、3年で2期まででしたが、それを3期に延ばしたことで、9年の政権が可能になりました。
現在の安倍政権は、小泉政権の任期を超えています。

この長期政権のおかげもあってか、省庁の力が弱体化しています。
1998年頃から、大蔵省の権限が強すぎるため、改革を進めてきました。
その結果、大蔵省は、財務省と金融庁と袂を分かち、役割分担の制限が行われました。
この一事だけでも、大蔵省力を削ぐ助けになったと思います。

さて、最近、さらに財務省の力が弱くなっています。

けっこう、長い間、世間を騒がせた、「もりかけ問題」は、財務省官僚のミスや捏造によることが明らかになりました。
残念なのは、証拠が明白にも関わらず、それに関与した役人が更迭されないことです。
それだけでなく、順風に出世した人も出ました。

しかし、これは表には分からない問題で、もしかしたら、安倍内閣が首根っこを押さえて制御するために泳がせているのかもしれません。

私は、安倍首相を礼賛しているわけではありません。
その意図は、短すぎる政権は、金の無駄遣いはあっても、実質的な意味を持たないということです。

官僚は、自分の出世と絡む、3年以上の政権になると、仕事の進捗を問われます。逆に、短期政権だとごまかしている内に上がいなくなってしまうのです。

冒頭に述べたように、現在、東大卒業者の就職先に変化が起こりつつあります。

以前は、財務省が人気で、しかも、文科I類から別れる、法学部出身の卒業者が、キャリア組として入省していました。
しかし、現在は、法学部からの志望者が減って、代わりに教養学部からの入省が増えています
採用にあたり、国家公務員上級試験での最高点獲得者が、九州大学出身ということが、東大卒ならびに財務省官僚に軽い衝撃を与えました。

官僚が力を持った方がよい世の中になるのか、そうでないのか、今は定かでありません。
ただ、その行く末を見ながら、変革していく必要があると考えるのです。