・症例タン
1861年4月、ブローカが勤めていたビセートル病院のブローカの病棟にルボルニュという51歳の男性が入院しました。
ブローカが何を尋ねても、彼は左手のジェスチャーを加えながら「タン、タン」と2度繰り返すだけでした。
ルボルニュは31歳のときビセートル病院に入院した病歴を持っており、その第1回の入院の2、3カ月前から言葉をしゃべることができなくなっていました。
しかし、その他の知能はまったく正常で、病院では「タンさん」と呼ばれていました。
彼は、他人のいうことは何でもわかり、いろいろなジェスチャーでおおまかな意志の伝達がでていました。
37歳で右下肢の運動麻痺が始まり、44歳からは寝たきりの状態でになって、6日後に死亡しました。
ブローカはその24時間後に剖検を行い、左の下前頭回に脳梗塞を見い出しました。
こうして、運動性言語野は発見されました。
この領域はブローカの名前をとってブローカの運動性言語野、ブローカ野、ブローカの中枢とも呼ばれています。
(下図参照)
運動性言語野は、イラストの44,45に相当します。