有事の金、そしてアメリカドル。
敗戦国や革命が起こった国では、ハイパーインフレが起こりやすいようです。
第一次世界大戦後、ドイツでは、天文学的なハイパーインフレが起こりました。
パン一個が1兆マルク(ユーロ以前のドイツの貨幣)。
100兆マルク札も登場したそうです。
近年では、アフリカ南部のジンバブエのインフレが有名です。
西暦2000年から8年間で、23桁のハイパーインフレとなりました。
100億ジンバブエ・ドルも登場したそうです。
その翌年には、1兆ジンバブエドルを1ジンバブエドルとする切り下げが行われたくらいです。
こういう天文学的な超ハイパーインフレは、それほど頻繁には起きませんが、
それでも歴史上では、時々みられます。
フランス革命の時には、アッシニア紙幣の増刷によりハイパーインフレが起こったという記録があります。
貨幣は、国家の抑止力を失うほど下落してしまうと、糸が切れた凧のように、
見えない先まで、ふっとんでしまうことがあるようです。
昔、ドイツ語の講義で使われた教科書にこうありました。
ドイツ人の主人公がハイパーインフレで生活に困るのだけれど、
たまたま本の中に1ドル(アメリカドル)が挟まっていて、
それを両替すると、家が建ったという挿話がありました。
当時、「えっ?本当?」と思いましたが、理屈としてはありえます。
それで、
「もしも万が一、日本がハイパーインフレになった時のために
1万ドルくらい紙幣で持っていてもいいかもしれないよ」
と私が知人に言うと、知人が本当に両替していたので、びっくりしました。
手数料は大きく引かれるし、利息はつかないので、本来は最悪の投資なのですが、
折しもの円高で、1ドル80円ほどで両替できたため、損はしてないようです。
その話は知人にとどまらず、知人が別の人にその話をしたようで、
聞いた人が500万円ほど(当時のレートで6万ドル)両替していました。
その人はある事情で、お金(日本円)を使い果たしてしまうのですが、
日本円の持ち金がなくなったことで、消費が止まりました。
後にアメリカドルに換えていたことを思い出し、日本円に両替しました。
ドルが日本の消費に使えないことがさいわいして、一文無しになることを避けることができました。
今は、当時の事情とは変わって、過度の消費が行われず、安定しています。
為替に興味のある方はご存じでしょうが、今年の1月、新興国通貨が急激に値を下げました。
アルゼンチンペソが2日間で13%も暴落し、新興国通貨全般の暴落を引き起こしました。
オリンピック開催に手をあげていたトルコや南アフリカ共和国の通貨も一気に下がったのですが、実際、2020年のオリンピック候補に選ばれていたら、どうなっていたのでしょう。
資源国のカナダドルも相当下げました。
そういう時は、自国の通貨が売られて、アメリカドルが買われているのです。
その国の経済や政治情勢が悪化した場合、同じ動きがさらに加速されます。
こうした急激な通貨安が起こることがあります。
そして、過酷な通貨安が起きた先は…
おそらく、インフレですね。