2014年9月21日
紹介状は、必ず保険がきくとは限りません。

ある病医院から別の病医院に紹介する文書、通称、紹介状。
正式には、「診療情報提供書」と言います。
ここでは、なじみやすいように、以下、紹介状と記載します。

紹介状は、基本的に保険診療の対象です。
費用が自費として2500円なので、3割だと750円。
高齢の1割の方だと250円の加算となります。

ただ、いつでもどんな時でも保険がきくかというと、そうではありません。

以前、こういう出来事に遭遇しました。

引っ越しして、もう半年以上前に通院が途絶えている患者さんがいました。
その患者さんが言うには、現在かかっている病院は、家から近いのはいいのだけれど、「あんたの言うことは信用ならん」と今までの通院歴までも信じてもらえなかったそうです。
その方は、紹介状を持っていかなかったので、それ以前の内服薬や病状について、説明する医者がいなかったわけです。

そのため、自分の言うことを信じてもらうために、紹介状を書いてほしいという依頼がありました。

依頼は受けることにしました。
しかし、迷ったのは、コスト(手数料)の取り方です。
保険で賄った方がいいのか、それとも文書料として自費請求した方がいいのか。

ネットも検索して調べました。
紹介状は、保険がきくはずだと言う人もいれば、条件を満たさなければ、文書料としか算定できないという書き込みもありました。

考えても分からないので、健康保険組合に問い合わせることにしました。

「しばらく受診のない遠方の方が、紹介状を求められたのですが、こういう例を保険で請求してもいいか、どうか?」

健康保険組合の人も即答ができませんでした。
検討するから、いくらか時間がほしいという返事でした。

その返答は、翌日になるかと思ったら、1時間少々して折り返しの電話がありました。

紹介状は、診察があって、医師と患者が約束を交わしたもので、診察なしの紹介状に保険は適応できない。
診察があった場合も、すぐに作成できるかどうかは分からないので、どこまでOKかはグレーゾーンだけど、紹介状の保険申請が翌月に来ることはよくありますという返事でした。

ということは、今回、診察を受けないで書く紹介状に保険はきかないことになります。
また、最後の診察の期間からあまりに日が経ちすぎているので、やはり保険にするのは無理だろうと考えました。

そのやりとりで、決定したのは、基本的に紹介状の依頼が診察であった方がいいのだけれど、その後、希望が出てくる場合がある。
そうした場合には、翌月までは、保険診療扱いにするということでした。

依頼のあった患者さんについては、診察するとなると、遠い所を交通費を払って来ないといけなくなります。
また、診察代と紹介状の料金を含めると、自費での文書料より少しだけ安いというくらいにしかなりません。

それで、結局、文書代金として請求させていただきました。

この文章を読んで、冷たいと思う方もおられるかもしれませんが、法令をねじめげてする行為は、控えさせていただいています。

あまりにも抜け道を作りすぎると、制度そのものが厳しくなってお互いに損失を被ることがあるのです。

最近のできごとで言えば、同一建物での往診料が極端に安くなり、また事務処理が驚くほど煩雑になったため、往診を取りやめた病医院が結構あります。
当院でも、事務の繁雑さにあきれて、往診費用の徴収をやめることにしました。

当院は、収入が減っても我慢して行っていますが、本当にどうしようもなくなったら、中止しないといけなくなるかもしれません。
以前に書いた記事と重複しますが、往診してもらうのが以前より難しくなったのです。

今回の記事のみならず、保険がきかないケースというのは、案外ありますので、気をつけてください。
また、当然の権利だと思うのは、控えてください。
権利の裏には義務があります。