2022年9月26日
白いトンカツ

所要があり、大阪に出向いた。
せっかくだから、大阪の人気店で、予約が必須という、「白いトンカツ」を提供する店に行ってきた。
夜は、ネット予約ができるけれど、昼は、電話予約のみで、予約時間の15分前につながらないとキャンセルになるという。

大阪北新地にある、ちょっと変わったお店。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

私が予約をとった日は、残席1名のみで、他の人を誘える状況ではなかった。
他の選択肢も考えたが、一生に一度だけかもしれないと、その店に固執した。

大阪の地下街から、少し抜けた店だが、私は、迷路のようなその地下街が苦手だから、淀屋橋駅から外に出て、Googleマップを頼りに行った。

ちなみに、私の頭の中には30年も前の大阪地下街の図が漠然と残っていた。
実際のところ、新生した大阪地下街は、その頃より、分かりやすくなっていたが、それでも初めての人間には難解な通路であった。

予約時間に遅れないように気をつけながら、早めに出て、地下街ではなく、Googleマップを参考に進むと、少しの誤差がでたが、ムダが少なくて、15分くらい早く到着することができた。

店のドアを開けたのが早かったかなと思っていたが、違和感なく受け入れられた。そして、私の後に客が入店することはなかった。

カウンターに座った私の後ろには、唯一のテーブル席である先客がわいわいとやっている。
3席あるカウンターには、なぜか私1人。

あれ?また少しだけ余裕あるじゃん?!

私は、暇こいて困るけれど、ゆったりくつろぐことのできる、独占カウンター席にありつくことができた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

少しして理解できたこと。
店員は、トンカツを揚げる人とサーブを行う人の2人しかいない。
いずれも女性だ。

白いトンカツというのは、低温で長めにおいて温めるため、時間がかかるらしい。
先客のグループから提供しなければならないから、私は、後回しになるわけだ。

携帯をおいていた私は、時間を持てあました。

すると、揚げ物担当の女性が、
「揚げるのに時間がかかりますから、先にキャベツを用意しましょうか?」
と声をかけてくれた。

「お願いします」と即答した。

すると、取り皿が用意された後、ボール一杯のキャベツがカウンターにおかれた。
「これ、全部、食べてもいいのですか?」
「ええ」と当たり前のように笑って応えてくれた。

後ろのテーブル席では、ワイワイ話をしている。
退屈で目のやり場に困った状況から救われた。

さっそくキャベツをとりわけ、お店独自のソースをかけて頬張った。
「後は、あこがれのトンカツを賞味するだけだ」

そうこうする内に、ついにトンカツが手元に届いた。

私は、ロースとフィレの両方を味わうために、2つのトンカツメニューを注文したのだった。
「食べログ」の記事を読むと、以前は、両方味わうことのできるメニューがあったらしい。
しかし、現在はない。
そうすると、ロースとフィレで別々の注文を入れるしかない。

年をとって、以前より大食いできなくなった私は、それぞれ200gのところを、ロース200g、フィレ100gの注文にしてもらった。
主食のごはんはたのまなかった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

さて、やってきたトンカツは、トンカツソースで対処するのではない。
10種類以上もある、塩をつけて味見することになる。
ボルチーノ茸、青さノリ、トリュフ茸…など10種類以上。
たくさんあると、かえって迷ってしまう。
一番のお勧めは、ボルチーノ茸のようである。

ごはんはなくして、「具だくさんの豚汁」を時折飲みながら、カツを口に入れていった。

フィレ

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

白いカツの味はうまい?
それほどでもない?

結論:悪いことはない。実際のところ、よく分からない。

TOKYOXというレアなブランドも注文した。
こちらは、ロースで。

TOKYOX-ロースカツ

でも、違いが分からない!

若い頃は、自分の味覚を信じて語ったが、今は確信をもてない。

食事って、余裕のある時はうまい、まずいの問題になる。
けれど、食糧難の時代になると、腹が減ったかどうかが問題になる。

うまいかどうかの問題は別にして、この店はよかった。

お皿を片付けやすい場所に置いておくと、
「ありがとうございます」と言ってくださる。

また、お店が配慮してくれたことに対して、私も
「ありがとうございます」
と何度も言えた。

それは、大人の言葉ではなくて、純真な子どもの心のままに。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

昔、まあまあ旨いラーメン屋でお金を払う際に経験した嫌な思い出。
皿洗いをしていた店主にお勘定を求めたとき、お釣りを出すのを面倒くさそうに、洗った手を拭かずに濡れた硬貨を手渡された嫌み。

その店の壁には、「味値千金」と座右の銘が貼られてあった。

食後の気持ちは台なしだ。
食事の味の中に居心地という要素も入っていると思う。

だから、味がいいにもかかわらず、つぶれる店が後を絶たない。
一方、「この味はどうなの?」と思う店が生き残っていることがよくある。

食事は、うまいかどうかの問題だけではない。

気持ちよく食べて出られたかどうかの方が大事だと思う。

違ったかな?