30年前の日本では、ごく一部の専門家を除いて、発達障害という概念がありませんでした。
アメリカ精神医学会が出している本に、「アスペルガー」という記載がありましたが、どのようなものか、感覚的に理解できないでいました。
通常では、理解できない行動をとる、何度言っても改善不能、人の気持ちが理解できない、などの人々は多々います。
そういう人は、何だろうという疑問がありました。
そのような方の何割かは、発達障害かもしれません。
サイコパス、人格障害というものもありますので、診断しかねるケースも多々あると思われます。
発達障害でも、幼少に明らかな問題行動を起こすケースでは、小学校でも特殊学級に通っていました。
しかし、軽度発達障害の多くの方は、普通学級に通っています。
ADHD、自閉症スペクトラムの有病率は、全体の5%あるいは、それより多いかもしれないと言われています。
ADHDと自閉症スペクトラムが重複するケースもありますので、合計して、10%より少なくなります。
これは、最近の知見です。
発達障害という概念が広まり、以前より理解が深まったため、医師も診断しやすくなりました。
また、世間的にも、自分で、「そうかもしれない」と考える人が増えました。
受診率が高くなる、診断の精度が高くなる、相互の理由で、発達障害と診断される方の数が増えました。
そのため、全人口に対する有病率も増えることになったのです。
発達障害による症状をいくらか改善する薬は出ていますが、
発達障害自体を「治す」薬はありません。
生活の工夫や援助によって、乗り切る方が一般的です。
とは言え、何ら困っていない人もいるため、誰でも治療が必要なわけではありません。
発達障害の特性で、ある分野で一流になる、あるいは秀でているため、そのまま生活していく方がいい場合も多くあります。
人の多様性というものについて考えさせられます。