2022年10月2日
病院の大倒産時代がやってくる

いきなり、衝撃的な題名で驚かれた方もおられると思います。
これから、すぐに起こる出来事ではありません。
何年後先から想定される懸案です。
これは、私が独自に試算したもので、世間では言われてないでしょう。

以前は、通常の企業と比較すると、病院経営はリスクが少ないと考えられていました。
実際、医療機関の破綻は珍しく、数少ないニュースに出るくらいです。

一般企業では、大手の倒産はニュースになりますが、中小企業の倒産は絶え間なくあるため、全体数が増えると、ニュースになりますが、個別で報道されることはあまりありません。

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ところが、病医院では、経営が苦しい時代を超えて、将来、危機的な状況になっていく可能性が高くなってきました。

社会保障費の増大の中、医療と介護に割くことのできる財政が限界に近づいています。

現在、コロナ補助金で収支を保っている医療機関が多くあります。
この補助金が、遠くない将来、大幅減少になる、あるいはなくなるということです。

コロナ危機による、経済への悪影響を持っている方は、多くおられると思います。むしろ、それが常識に近いレベルに達しているかもしれません。

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しかし、コロナが終息(収束という方が正しいかもしれません)することによる、経済ショックに気づいている人は、少数派でしょう。

一時的には、コロナがありながらも自由になったとフラストレーションを抱えていた人が、お祭り騒ぎして、これまで辛酸をなめてきたサービス業が活況を呈するかもしれません。

一方、コロナが終息(収束)した場合、国や地方財政から補助金が大幅に減額されることになります。
現時点でも大幅財政支出により、国も地方自治体も疲弊しています。

特に地方自治体は、夕張のように、一度財政破綻すると、復活することが困難な状況です。

アメリカでは、財政破綻している例が散見されますが、個人の自己破産のように処理されて、再生しています。

ところが、日本では、そういうシステムがないのです。

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現在、国家も財政破綻の危機に瀕しています。
世界の潮流に逆らって、日銀が利上げをしないのは、景気に配慮しているという事情だけではありません。

ご存知のように、(新興国を除いて)現時点で国債の借金が世界一大きいのは、日本国です。
債務は、GDPの260%に及びます(2022年12月の時点)。

次は、イタリアで、150%です。

アメリカも大規模金融緩和の影響で、138%辺りに高止まりしています。

日本がなぜ、金利を上げることができないかというと、他国にならって、同じことを行った場合、大きすぎる借金によって、利払いができなくなるのです。

日銀が引き受けている500兆円以上の国債の利払いを1%に上げると、1年間に5兆円の金利の支払いをしていかなければなりません。

日銀が自由に使うことのできる金額は案外少なくて、20兆円を切ります。
もし、国債の金利が2%になると、毎年10兆円のお金が必要となります。

日本は、高金利に耐える力がないのです。

ここで、疑問を生じた方がおられるでしょう。
日銀はお札を発行することのできる機関なので、マネーを供給して乗り切れるのではないか?

実際、その案は一理あります。

ところが、そうした場合、別の弊害が起きます。

金利を上げずに通貨量を増やした場合、さらなる通貨安とインフレが起こります。

実例として、イギリスが戦後の負債処理に困った時、貨幣の供給を増加させて、金利を抑制していました。
永久国債というものも発行しました。
この永久債は、現在も残っています。

その結果、1ポンド10ドルだった相場が、昨今、1ポンド1ドル近くに落ち込んでいます。
これは、典型的な通貨安です。

イギリスは、世界に君臨する覇権国をアメリカに譲ることになりました。

悲しいことですが、人が作る技術は高度に進化しても、感情を司る脳の進化はないということです。

そのため、力(軍事)とお金(経済)が世界を支配する構造になっています。

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日本では、江戸の幕末に開国して、貿易すると、横浜から必需品が流れて、江戸で必要な物資が足りなくなりました。

そのため、「雑穀、水油、蝋、呉服、糸」の五品目が足りなくなり、直接、貿易するのではなく、まず江戸に持ってくるよう、御触書が出されました。
(五品目江戸廻送令)
品不足により、インフレになったためです。

さらに、西欧との為替レート違いにより、日本はますます、貧乏になりました。

日本では、金1に対して、銀5の比率で交換されていました。
ところが、欧米では、金の価値が高く、金1に対して、銀15と3倍の開きがありました。

そのため、黄金の国ジパングは、金の流出が激しく、底をついてきました。

それを食い止めるために小判の質を純金の金貨ではなく、混ざり物の金属を入れて、3倍供給したため、マネー供給が増えすぎて、さらなるインフレになりました。

この30年近く、日本はデフレで苦しみましたが、行きすぎたインフレは、庶民の反発を呼び、政権の存続にかかわります。

江戸幕府が滅んだ原因の1つに強烈な品不足によるインフレによるところがあるのです。
庶民の暮らしが苦しくなりますから、農民だけでなく、力をつけた商人も抵抗します。

余談ですが、名古屋大学の論述試験に、これに触れた過去問が出題されています(受験生へ向けて)。

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話を本題に戻しましょう。

現在の医療機関は損益分岐点が高く、ギリギリのラインで経営しているところが多い状況です。

黒字の機関もありますが、それで安心できるわけではありません。

これは、平時の数字であります。

では、問題は何でしょうか?

黒字が多ければ、別ですが、大抵の医療機関では、そこまでたどり着いていないと思います。
そのため、借金を重ねることが多くなっています。

一例をあげます。

250床程度の平均的な医療機関で、経営状態がよく、決算で5000万円〜1億円の利益を上げていたとします。

個別の病院によって事情は異なりますが、建物を建築するための資金を銀行から融資された場合、元本返済と支払利息を支給されることになります。

この不動産の支払が壁になるのです。

その病院の売上が、40億円50億円で利益が1億円あったとしても、利益率は2%くらいになります。

飲食店が高い利益率を上げることが難しいことを知っている人は多いと思います。
医療機関もそれに劣らず、利益を出すことが難しいのです。

そういう状況では、建築物に対する返済は、滞ります。
利益が出たら、税金を払わなくてはいけません。
そして、税金を納入したら、元本を返済する資金がなくなるのです。

黒字だけれど、税金を支払うと、運転資金が足りなくなるため、銀行から借金します。
黒字であると、銀行は理解を示し、貸し出しをしてくれます。

しかし、このような場合、税金 + 利息を支払うだけで、一向に元本が減らない事態になります。

一方、建物には、修繕費、そして古くなると、立替が必要となります。

残念なことに、現在の診療報酬では、それをカバーするほどの利益が出ない仕組みになっているのです。
診療報酬は、国が決定しますから。

その場合、建築物の支払いが減っていかないことになります。

建物は、年月が経つと老朽化しますから、経年劣化すると、建て替えを行うか、同じ建物で営業して、いずれは廃業を待つことになります。

これが、現在の厳しい現実です。

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さらに、懸念するのは、コロナの終息(収束)によって、収入が減ることです。

国家も財政破綻の回避によって、社会保障費が削減されるでしょう。

ということは、医療機関が建造物への支払いが滞り、経営が立ちゆかなくなる確率が高くなるということです。

不動産というお金を返済できるほど、医療機関は、金銭を得ていないのです。

もちろん、多くの医療機関が破産すると、すぐさま医療崩壊に結びつきますので、そうはしないと思っています。

しかし、経営に行きづまって、借金を棒引きして、再出発できる医療機関は限定されるでしょう。

こういう事例を当たり前に認めると、銀行の不良債権が増加して、金融危機に陥ります。

社会保障費を十分に出すことのできない政府は、医療機関の経営をさらに圧迫することでしょう。

もし、そうなると病院の大倒産時代がやってくるのです。

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今の日本は、安価で良質の医療を受けることのできる、社会主義国に近い国なのです。
しかし、その状態をいつまで保つことができるのでしょうか?

アメリカでは、自費診療が普通です。
風邪で受診して、たいした治療を受けなくとも5万円くらいの料金を請求されます。

日本の救急車は無料ですが、アメリカでは、8万円くらい必要となります。
救急救命士が乗って搬送すると、金額は、倍の15万円くらいになります。

専門の診療科にすぐにかかることができません。
心療内科では、1時間当たり3万円の金額が請求されます。
インフレとなっている現在では、もっと高くなっているかもしれません。

日本のマクドナルドでは、ビッグマックセットが750円くらいで用意されています。
現在のアメリカでは、同様の商品を受け取るために2500円〜3000円が必要となっています。

日本の医療分野は、いかにめぐまれているか!

数年後に答がでます。

なお、この記事は、読む人を不安に陥れるものではなく、客観的な材料から判断して、

「悲観的に準備して、楽観的に行動する」 岡本史朗氏

というコンセプトで書いています。