2016年4月24日
潰れそうなホテルを再建した話

名古屋の中心部に、老舗と言えるホテルがあった。
しかし、老舗ということは、古いという意味を同時に内包することがあり、建物の老朽化が出ていた。
また、職員の馴れ合いや無気力さも出ていた。

そんな頃、名古屋駅の再開発があり、そこにホテルも建設された。
さびれた老舗ホテルに客足は遠のき、赤字が続いて、再建か倒産かの選択となった。

その折り、労働組合の委員長をしている人が、ホテル再建の担い手の役を任される。
といって、その人がまず行ったのは、150人いた従業員の数を50人ほどにする、リストラだった。
再建と名がついてはいるが、リストラとなると、首をきられると思われ、社員の反発も大きかった。
はなから、話を聞いてくれない人も多かった。
そんな中で、今後の見通しが立つ人を他の雇用先に送り出し、リストラは完了した。

しかし、仕事はそれで終わったわけではない。
その後、ホテルの経営を本当に再建する、という役割を課せられたのだ。

残った従業員にもそっぽをむかれる再建人は、家でも再建のための改革を練る。
見かねた妻が、「あなた、ホテルの再建できるの?」と問うと、再建人は即答した。
「おれは、経営の専門家ではない。ホテルの再建なんて、できるわけないだろう?おれは、働く人間の再建を目指すだけだ」という。
従業員の再建とは、「働く人が、最も幸せな従業員だと思えるようにすること」と設定した。

そのため、厳しい財政状況の中、社員食堂をリフォームして、居心地をよくした。
喜んでくれた従業員もいたが、「それが何になる、単に無駄遣いをしただけはないか」と訝る人も中にいた。

そういう両意見の中、再建人は、従業員が幸せになるために、毎月、誕生日月の社員にフルコース料理を振る舞った。
そして、見所のある働きをした社員を毎月表彰した。

ここで大切な要点がある。
・従業員のことをみていること
・よい振る舞いに対して、ほめること

こうして、一部でありながら、社員の心が変わっていった。
後は、心構えが変わっていった社員が、お客さまのしあわせを願ってとった行動が感動をうむことになる。

その後もピンチが訪れるが、その度に社員がしだいに団結して乗り切っていった。
人のこころは、なかなか変わらぬが、徐々に浸透した、大きな変革は変える力があるようだ。

学級崩壊から改変した学級と、再建不良から脱したホテル。
人間でいうと、子どもと大人の違いはあれど、変革の要素に共通項がある。

・自分を見てくれているという意識を呼び起こすこと
・ほめること

年齢に関係のない人間の本質かと思う。