2019年2月24日
旅行代理店の苦悩

今から30年以上前は、ホテルや航空機の予約をする時は、たいてい、旅行代理店を使っていました。
もちろん、今でもそういうことはありますが、その比率が激減しました。

また、代理店がとる手数料も昔は、それなりのものでしたが、ある時期を境に、この比率も減りました。

1つ目の大きな変革は、パソコンの普及でしょう。
パソコンと言っても、現在のような個人用のものでなく、商業用コンピューターでした。
これに、通信システムをつなげて、予約システムを作っていたのです。

しかし、初期の頃は、通信システムでつないで、送信しても、確定したわけではなく、本部で最終手配していました。
だから、予約の受付はするけれど、とれるかどうか分からなくて、後日、返事をするという具合でした。

当時は、そういうものかと思っていました。
今は、通信網の配置に考えをめぐらすと理解できます。

まず、自分と旅行代理店を無人でつなぐ通信システムがないため、代理店に足を運ぶか、電話するかしかなかったわけです。
代理店では、まとめた情報を元にホテル、旅館や、航空会社に連絡して確認する必要があります。

この場面でも、それらをつなぐ通信網がないため、電話やFAXでのやり取りをしながら、人の手で、予約を確定させていったはずです。

手慣れた人は、自分で宿や航空会社に連絡して、予約をとっていただろうと思います。
もちろん、会社の言い値の正規料金です。

旅行代理店では、自分で行う手間を省いてくれます。
また、直接手配ではできない、割引プランを用意している場合もあります。

ですから、旅行の予約は、店舗を持つ、旅行代理店に任せることが日常的でした。
また、旅行代理店がとることのできる手数料も十分ありました。
ですから、旅行客が増えるにつれ、店が潤っていきました。

2つ目の境は、インターネットの利用でしょう。

今では、インターネットは、「ネット」と略されるくらい普通のものとなりました。
黎明期は、「パソコン通信」と言って、オタク系のものとみられているふしもありました。

これが普及して、幾多のインターネット会社が設立されました。
いわゆる、ITバブルというものもありました。

このバブルは弾けましたが、IT関連の企業が淘汰されただけで、市場規模は、大きくなっています。

携帯でもインターネットに接続できる、docomoのi-モードというものも登場しました。
現在は、インターネットに接続することのできない携帯電話は、ガラケーと呼ばれ、いわゆる、スマホは、インターネット環境にアクセスすることができます

こうした、個人でインターネットにアクセスできる環境が、旅行代理店のあり方を変えました。

インターネットを介した業者が登場することによって、代理店に赴くことなく、ホテルや旅館の予約がとれるようになりました。
しかも、不確定な予約でなく、即時に締結できる予約となっています。

航空会社もインターネットサイトを充実させることによって、自社予約が可能になりました。

さらには、一歩進んで、航空会社が、宿と提携して航空券付の宿泊をとるサービスも普及しました。

旅行代理店の存在価値が薄らいできたわけです。
そのため、得ることのできるマージン(手数料収入)も減少することとなりました。

旅行代理店のビジネスモデルが大きく崩れたのは、このインターネットの普及によるところが大きいでしょう。

これは、システムの変遷によって、人の労働価値がなくなった典型例だと思われます。
こうしたことは、今後も起こり得ます。

AIが、人間の仕事を奪うというという話を聞いたことがある人は、割合おられるでしょう。

(参考)
今後、AIおよび機械にとって変わられる職業の候補がいくつも存在しています。

機械が奪う職業ランキング(米国)の上位15位を抜粋

1. 小売店販売員
2. 会計士
3. 一番事務員
4. セールスマン
5. 一般秘書
6. 飲食カウンター接客係
7. 商店レジ打ち係や切符販売員
8. 箱詰め積み降ろしなどの作業員
9. 帳簿係などの金融取引記録保全員
10. 大型トラック・ローリー車の運転手
11. コールセンター案内係
12. 乗用車・タクシー・バンの運転手
13. 中央官庁職員など上級公務員
14. 調理人(料理人の下で働く人)
15. ビル管理人

ダイヤモンド社より

このように、機械やシステムが、人の職を減らすという傾向は、変わらないと思われます。
ただ、すべてがなくなるというわけではありません。

しかし、縮小したパイの中で、業務を行っている、旅行代理店は、こうした風潮の先鞭となっていると考えています。