昨日のブログの続きです。
円高に苦しんで、円安、円安とかけ声のように言って、大型の財政出動をしている日本人には理解できないことでしょう。
これまでいくどもありましたが、最近も新興国は、自国の通貨安に苦しんでいます。
ドルの金利が上がって、ドル買いが強まって、資金が新興国から引き揚げられているのです。
アメリカから出た資金がアメリカに還流しているわけです。
日本では、1ドル360円の固定制の為替相場から、変動制の相場に変わってから、大きな流れでは、円高方向に動いています。
波はありますが、大きなtrendは、円高方向ということにお気づきでしょうか?
日本では、1985年のニューヨークのプラザホテルで話し合われた、プラザ合意によって、急激な円高となりました。
当時から、円高不況の予測がつぶやかれていましたが、金利を下げた結果、株や不動産に資金が流れ込み、バブルとなりました。
そして、ご存じの通り、バブルは崩壊したのですが、プラザ合意は、そのバブル崩壊のきっかけとなった可能性も示唆されています。
日本は、円高で苦しんだのに、他の国は、通貨安で苦しむ。
論理的には、真逆のことです。
なんだか、不思議な気がしませんか?
その理由は、以下の点にあります。
日本は、世界では、債権国になります。
海外にお金を貸していて、借金する必要がありません。
また、外国に借金を返すことも、ほぼありません。
日本の負債(借金)は、日本国内のことで、身内から借りたお金をどう精算していくかということなのです。
ここが、新興国と異なるところです。
新興国で、
▲お金が必要で借り入れしたい
▲借りたお金を返さなければならない
こういう状況での通貨安は、危険なのです。
現実は異なりますが、これが、もし日本の場合だったらと、仮定して考えてみましょう。
日本は、円高の時代、1ドル70円台でした。
計算がめんどうなので、ざっくり1ドル=80円といたしましょう。
このレートで、アメリカから、1億ドル借りたとします。
(本当は、日本は、アメリカ国債を兆円単位で「貸しています」が、もしもの話でお話します)
アメリカや投資家が資金を引き揚げて、アメリカ国債を返還しないといけない時がきたとします。
1ドル80円の時に借りたお金は、1億ドルならば、80億円の借金となります。
ところが、1ドル120円となった場合は、どうでしょう?
→ 返済金額が、120億円となります。
同じ1億ドルを返すにしても、80円の時と120円の時とでは、1.5倍負債が膨らむのです。
わかります?
最近、トルコリラが急激に下げ、トルコショックと呼ばれています。
トルコは、今から4年以上前にオリンピック開催地の名乗りを上げて、日本と争った経緯があります。
結果、東京が開催地となったわけですが、もし、2年後にトルコでオリンピックが開催されることが決まっていたら、どうなっていたでしょう?
開催できない可能性がとても高いように思われて仕方がありません。
さて、トルコで使用されている、トルコリラは、一時期、1トルコリラが170円を超えていました。
それが、最近では、どうでしょうか?
次第に、下落していき、最近は、20円を急速に割り込みました。
現在は、1トルコリラは、約18円です。
世界の情勢からみると、「円」と比較するよりも、ドルと比べる方が現実的です。
2001年には、1ドル=0.6トルコリラくらいでした。
それが、最近では、1ドル=4トルコリラ近辺となっています。
ざっくり計算しても、ドルに対して、トルコリラの価値が1/7ほどになっているわけです。
トルコリラの長期チャートです。
前に行った1億ドルの借金の話をここでもしてみましょう。
2001年では、6000千万トルコリラで1億ドルを換金することができたわけです。
しかし、最近では、1億ドルを借りるため(あるいは、返すため)には、4億トルコリラが必要となります。
日本人の頭に入りやすいように空想の話をすると、6000万円で借りたお金を(利息なしでも)4億円で返却しないといけないという、気の遠くなる話です。
少し裕福な家庭が、住宅を建てるために6000万円借りました。
それが、利息抜きで、4億円返さないといけないという話です。
さて、こういう場合、人がお金を工面するために、どうするでしょうか?
収入および担保資産が十分な優良顧客に対して、銀行は、低金利でお金を貸してくれます。
最近では、住宅ローンで1%、マイカーローンで3%台です。
しかし、すでにローンを組んでいて、返済が難しい。
生活が苦しく、食っていくため、あるいは、別の借金を返すためにお金を借りる顧客に対し、金融機関は、どう対処しますか?
法律的に許される方法は、次の2つです。
1 借金(融資)の話をお断りする
2 金利を高く設定する
昔、サラ金が28%の金利という、出資法にひっかかる手前の高金利で貸していました。
(現在は、利息制限法に基づき、15%〜20%<20%は少額の場合>の範囲となっています)
貸し倒れする可能性の高い客は、低い金利では相手にできないわけです。
利益よりリスクが高すぎるのは、明白です。
ゆえに、高い金利を設定するのです。
通貨安になった国が、先進国では考えられない異常な高金利政策をとるのは、これと同じ理屈です。
金利を高くしないと、自国の通貨を買ってくれない、あるいは、借金を許してくれないからです。
トルコリラの話ですが、最近、私が経験したことをお話しましょう。
今から、4年くらい前のことです。
私は、ある証券会社のFXで、トルコリラを買っていました。
投資資金は、100万円です。
当時のレートは、1トルコリラ=43円くらいでした。
対して、手に入る金利は、7.5%くらいでした。
だから、じっくり長期保有で持っていたらよいと考えておりました。
ところが、トルコリラが下落して、30円台になっていきました。
利息は入ってきますが、通貨安の含み損の方が大きかったのです。
しかし、それは一時的なものかと思い、安くなったら、買い足していきました。
金利は、確かに入るのだけれど、含み損はどんどん膨れあがっていきました。
そして、つい先日、トルコリラが16円ほどに下げた時、強制ロスカットを食らいました。
つまり、
投資金額のうち、3万円は残りましたが、後は、すっからかんになったわけです。
高金利通貨は魅力的に見えますが、金利によって得られる収入よりも通貨の下落からもたらされる損失の方が、スピードが速く、大きいのです。
信用とは、そういうものです。
トルコリラの急激な下落を呼んだのは、アメリカとの貿易戦争の話題ですが、それがなくとも、危ない通貨だったわけです。
(貿易戦争前の段階でも、評価益は、30万円くらいでした)
金利7%台のトルコリラよりも、金利2%のアメリカ国債を多くの人が買いたがるのです。
信用を毀損すると、金利が異常に高い、サラ金で借りるしかありません。
これが、信用による、リスクとベネフィットの結果なのです。
通貨安になると、国の政策金利を上げざるを得ないという理屈をご理解いただけたでしょうか。