映画についての考察を記載します。
千と千尋の神隠しには、深層部分が多く存在し、そこから得られる特殊解釈がいくつもあります。
今回は、純粋に映画を楽しむということも考えています。
大町先輩との交流がベースになっています。
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登場人物紹介
講師
一文字浩介
地方の準難関大学卒であるが、なぜか帝国大学の講師をしている
心理学者の若手
興味は豊富で、多彩な知識を持つが、まだ何も大成していない
学術とは変わった認識を持つ
言葉使いは、ていねいだが、少し変わり者
先輩
大町豊
同じ大学で他学部の一文字が尊敬する先輩
同じ趣味があるため、仲良くなった
仕事により、しばらく音信不通になっていたが、SNSで通信が復活した
有能であるが、自分の限界も感じている
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一文字:新しい宮崎駿監督の最新アニメは、評価が3分割しているようです。
1 おもしろい
2 おもしろくない
3 分からない
大町:私は千と千尋も、もののけ姫も,よくわからなかったタチだから、今回はもっとわからないかもね…
となりのトトロやラピュタやナウシカはわかったから面白かったのかもね。
一文字:ラピュタの話はすっかり忘れてしまいました。
実は、ぼくは、となりのトトロの解釈ができないのです。
あの映画は、星の王子さまという小説を彷彿させます。
キツネは、王子様に言いました。
「大切なことは目に見えない」
※TVコマーシャルでは、王子様が言っていたように、語られています。
しかし、本当のところは、キツネが、王子様に教えているのです。
原文を読むと、ハッキリします。
星の王子さま サン=テグジュペリ 作
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子どもを運ぶ猫バスは、大人には見えないみたいですね。
大町:トトロは深読みしないで単純に楽しむのがコツだと思うよ! だって3歳児でも楽しいんだから!😆
一文字:後半のネコバスは、楽しかったけれど、前半部が、サッパリ面白くなかったためです。
まっくろくろすけも唐突に感じました。
千と千尋に出てくる、黒いチビの方が自然に感じました。
お父さん役の声優、糸井重里の発声が悪くて、とてもガッカリです。
ただし、トトロの主題歌は、とてもよかったです。
一般にジブリ作品の主題歌は、自分には合いません。
ルパン3世カリオストロの城の主題歌、炎の宝の次に好きです。
大町:なるほど,お父さんの声だけ,なんかプロっぽくなかったのは糸井重里だったからか! まぁそれはそれで優しそうな声でいいけど。
まっくろくろすけはどんな意図で登場させているのかは,わからないけど,子供はそれでも楽しんでるってところでいいんじゃない?
映画の冒頭は古くて不気味なお化け屋敷に引っ越して、それを五月とメイが楽しんでいるってところが、逞しさを感じて好ましかったよ!☺️
一文字:あ、そう言えば、トトロでは、姉妹が五月とメイですね。
いずれも5月を意味しています。
これも半分以上の人が気づいていない意図的な趣向だと思います。
大町:なるほどね。
一文字:これは、好みの問題でしょう。
全く異なるジャンルになりますが、私は、ジャッキー・チェンが好きで、プロジェクトAを何度も見ました。別の人には、どうでもいい娯楽映画でしょう。
宮崎アニメでは、カリオストロの城は、本気でみたものと、流し見で音だけ聞いたものを合わせると、10回は超えるでしょう。
あの映画も、率直におもしろいです。
大町:そうだね。
一文字:今年の始め、ある女性から、TVで放送された、ハウルの動く城は観ましたか?という質問が来ました。
うちにはTVがないから、その時ではないけれど、これまで観た中では、ハウルは好きですよ、と答えました。
そして、自分の解釈を伝えました。
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「千と千尋の神隠し」では、ここにいるものは、働かないと生きていけないと釜じいが教えます。
そして、湯ばあばは、働こうとする者とは契約しなくちゃいけない誓いをたててしまったから、千を労働者にします。
千尋 ー 尋 = 千という労働者 = アイデンティティを失った個
という構図が隠されていると勝手に解釈しています。
さらに、抜かれた「尋」には、「探し求める」という意味もあります。
主人公の名前ですから、偶然ではないかもしれません。
ハウルの動く城では、もう少し複雑になっていて、
ハウル + 火の妖精 ー 心臓 = 魔力を持ったハウル + カルシファー になりました。
反対に心を取り戻す時には、
ハウル + 火の消えたカルシファー = 心を取り戻したハウル + 自由になった火の妖精
となります。
意識が戻ったハウルは、「体が重い」といいます。
その言葉を聞いたソフィーは、「そうよ、心って、重いの」と返します。
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この構図をお知らせした方から、
「ジブリへの半端ない情熱」という言葉が返ってきました。
ぼくは、ジブリ作品は概ね好きですが、崖の上のポニョは一度きりです。
風立ちぬに至っては、未だに視聴していません。
大町:ただ、このような解説を理解した上で映画を観ると、作品に込められた意図が見えて面白く思えるだろうね!☺️
私は意味がわからなかったから面白いと感じなかったんだけど,映画がヒットしたんだから多くの人が分かったんだろうか?
一文字:そんな解釈を考えながら観ている人は、ほとんどいないと思います。ぼくも、観た後に振り返って解釈しています。
潜在意識が感じ取るものだと思っています。
一方、千と千尋の神隠しのラストシーンで集団の豚の中から、「ここには、私のお父さんもお母さんもいない」と断言できた理由について、私には理解できませんでした。
ジブリに直接質問された方がおられ、運よくジブリからの回答を得たという報告がありました。
それによると、「千尋が成長して真実を見る目を獲得した」という回答になっています。
解釈は自由ですが、個人的には、すっきりしません。
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大町:感性の要素がより濃く反映されているようだね。
一文字:そうですね。
洞くつを出てきた後は、車には、草や蔦が絡んでいました。
これは、時の経過を表しています。
先読みしすぎるぼくは、異質の世界から帰ってきた千尋の家族がその後、どうなったかも気になるのです。
引っ越しがうまくいったのか?
お父さんが長期不在で、仕事に支障をきたすことがなかったのか?
借りていた家が解約されなかったのか?
これは、映画をはみ出た部分ですが、現実主義として懸念するのです。
大町:それは、考えすぎだろう。この映画は、架空の物語だから、そこから先は切り離してもいいのではないかな?
一文字:そうですよね。解釈も行きすぎると、きりがない。
※ところで、カオナシの解釈については、後日、いつもの女子大生との心理学講座から、お伝えすることにいたしましょう。
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「ルパン3世カリオストロの城」で、ルパンは、
「悪い魔法使いの言葉を信じるのに、泥棒さんの言葉は信じてくれないんだ。お姫様が、信じてくれたら、泥棒さんは、空を飛ぶことも、湖の水を飲み干すこともできるに…」
とガッカリした言葉を述べています。
大町:これ一体、どんな意味があるの?
一文字:ルパンは2つの宣言をしています。
これを1つずつ解説していきます。
まず、「空を飛ぶこと」についてです。
これは、暗殺部隊に包囲されたルパンが動じることなく、「さあて、どうやって遊ぶのかな」と告げた後、カリオストロ伯爵によって、
「花嫁の部屋を血で染めることもあるまい」
と言って、お姫様の部屋から、床を抜いて、決して抜け出すことのできない地下牢に落とします。
この時、ルパンは、魚釣りに使用するような道具を使って、ぶら下がり、真っ逆さまに地下に落とされることを防いだのです。
これが、「空を飛ぶこと」を意味します。
大町:では、2番目の「湖の水を飲み干す」ことは、どういうことを指すの?
一文字:これは、物語の終盤に起こります。
伯爵が、時計台の中に金の山羊と銀の山羊の指輪をはめ込んだ後、時計台が崩れて、水路が破壊されて、湖の水が流出します。
その水がなくなった後に、ローマの古代遺跡が浮き出ます。
お姫様を抱きかかえて誘導した後、
「オレのポケットには大きすぎらあ」
という粋なセリフを残します。
これが、第2の予言の実現です。
大町:何気ないセリフにも意味があるんだね。
一文字:そういうことです。
これは、論理的で詳細な解釈の部類に入ると思います。
それから、最終場面で、銭形警部が、ルパンを追いかけます。
その時、お姫様は告げました。
「あの方は、何も盗んではいませんわ」
それに対して、銭形が粋なセリフを返します。
「いいえ。ルパンは大切なものを盗みました。……あなたの心です」
大町:うーん。そこまで考察して観る人は、ほとんどいないよね。
一文字:そう思います。
解釈はできなくていい。でも、そのくらい張り巡らせたプロットが物語に深みを与えていると考えます。
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名映画には、言語化できる部分とそうでない部分が多く入っている
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