うちのマンションの窓は広い。
上は、成人の平均身長よりも高く、下は、床から20cmくらいである。
ダイレクトスカイビューと呼ぶらしい。
ちなみに、ベランダはない。
窓に顔を近づけて外を見渡すと、落ちるような感覚を覚える人がいて、「こういうマンションには絶対に住むことができません」という人もいる。
まあ、これは好き好きだ。
ただ、眺望がいいことと、採光がいいことは確実である。
四面ある中で、うちは北側に面している。
山とその上にあるお城が見えて、そこそこ景色がいい。
日本では、南向きの住戸が好まれるが、ヨーロッパでは、北側の地に光がさし、間接的な採光がとれることから、南よりもむしろ北の方を好む向きがあるという。
ヨーロッパ人は、光に弱く、サングラスをかけている人が多いとか、ホテルも暗めに設定されていることから推測すると、うなずける話かもしれない。
ところで、うちのマンションは、ダイレクトスカイビューのおかげで、夏の南側は悲惨らしい。
カーテンをせず、直接光が入ったらその光量と暑さはたまらないらしい。
同じマンションの人に聞いた話では、「犬が焼け焦げる暑さ」だという。
西もまた難がある。
西日がきつくて、暑い上にまぶしい。
私は、今のマンションでは北側が一番立地がいいと勝手に思っている。
ただ、少し前、この位置にあることにいくらかの不安を覚えた。
というのは、マンションの北側には駐車場があり、そこに新たにマンションが建築されないかというおそれである。
それは、ありえると考え、熟考した末に出した結論は、
「当面はありえない」という推測だった。
というのは、北側の場所にマンションを建築するとなると、北を入り口に、南をベランダにした配置にせざるを得ない。
それは普通の方式で、何が問題だろうと思う方もおられるだろう。
しかし、実際に建築した場合には、おそらくそのマンションは売るに売れないと思われるのだ。
なぜなら、採光と眺望を得ることが至極困難だからだ。
その理由は、南側に大きなマンションがすでに建っており、その2つをはばむ要因となっているためである。
うちのマンションは、市内で一番高いビルなので、それを超えるのは、ほぼ無理と思われる。
しかも、うちのマンションより低い層の住居は、対面の住民に見られることを意識しながら生活しなければならない。
だから、南の陰りをあおりながら、常にカーテンを閉めた状態で暮らさざるを得ないことになりそうなのだ。
現実に近隣のマンションで南向きに建っていたマンションに対して、細い道を1本隔てた場所に新築マンションが建設されることになった。
元のマンションよりも新築マンションの方が階層が高い。
従って、以前からあるマンションについては、日当たりと眺望の恩恵を受けることは絶望的になったのである。
こうなると、そのマンションの資産価値が下がる。
ただ、住めればいいというのであれば問題ないが、快適なマンションライフを求めている人にはショッキングな現実である。
都心部では、こういう状況も起こりえると思うのだが、地方都市では、本当に資産価値が目減りする。
半値にするとか、よほど売値を下げないと、買い手が見つからない状況になったのだ。
元々住んでいる人には気の毒な話であるが、法律上は仕方がない話である。
翻って、わがマンションの北側に別のマンションを建築するとなると、同じ憂き目に遭うおそれがある。
それを避けるには、建築を90度ずらして、東をメインにするか。
しかし、それだけの土地もとりにくいし、また眺望もよくはない。
だから、うちのマンションの北側に別のマンションを造らないという商業的な計算が働くのである。
ただし、地方都市でも中心地ではある。
商業ビルが建つ可能性はありえる。
その時は、眺望にこだわらず、立地や利便性を主体にして建築することだろう。
さて、我が家の眺望はいつまで保たれるのであろうか。