ごくたまに、自分が無実の罪に問われた場合、どうしようかと思うことがある。
日常的に一番心配なのは、満員電車での痴漢問題である。
この件に関しては、相手が立証する確固とした証拠がない代わりに、告訴された側も無実を立証する方法がない。
双方とも、悪魔の証明ということになる。
医学でも、調べられる範囲で異常がないということはできるが、まったく何も異常ないという証明ができない。
究極的には、人間には常に数個のがん細胞が存在していると言われている。
しかし、その中で、本物の癌に成長するものは、ごくわずかである。
だが、検査不能な小さな癌を見つけることはできないし、ましてやがん細胞がないという証明はできない。
であるから、怪しい物を黒として取り扱うが、何も異常ないという証明は、「現在の科学で分かる範囲」ということになる。
さきほどの痴漢の問題であるが、否がないなら、冷静におとなしく無実を訴えればいいと思う人もいることだろう。
しかし、話はそう簡単にはいかない。
無実が認められないことは多いのだ。
以前、60代の大学教授が痴漢の罪で捕まった。
しかし、後になって無罪が認められて、冤罪となったことがある。
その間、かなりの期間があったように思う。
罪を言い渡されてから、これまで積み上げてきた業績も名声も吹き飛ぶことだろう。
毀誉褒貶を受けるだろう。
家族もつらい思いをすることだろう。
捕らえられた間の時間も戻ってくることはない。
以前、厚生労働省の女性エリート官僚が、書類作成の指示をしたとして、無実の罪に問われたことがあった。
その女性のみならず、周りの証言者も認めていないのに、検察が作ったストーリーのまま、強硬に押し進められて、有罪とされた。
しかし、膨大な書類の中、不明な個所を見つける。
明らかに自分がいない時間に操作に荷担したように書かれている時間帯がある。
それを基に、他の証言を加えていって、ようやく無実を勝ち取ることができた。
その期間は1年以上に及ぶ。
この問題は、大阪地検の上層部が、大物をあげるため、データを改ざんして、辻褄を合わせたという組織的な事件である。
こうした巨大な組織と圧力に我々は立ち向かえるのかという不安がある。
ちなみに痴漢として冤罪になりそうな時、どうしたらいいか?
TV番組で有名な、「行列のできる法律相談所」で4人の弁護士の内、2人は、「すぐに逃げる」と回答している。
それくらい無罪を証明することが難しいというになる。