– シンデレラは不幸な少女だったのか? –
あなたも一度は耳にしたことのあるお話、シンデレラ。
古くからあるこのお話。
私は、15年前くらいまでは、このお話は、不幸な女性が幸福になったサクセス・ストーリーだと思っていました。
でも、話の本質を考えると、そうではありませんでした。
シンデレラは最初から、幸福だったのですね。
最初というのは、生まれてから裕福な時だけではありません。
継母にひきとられて、灰かぶりと呼ばれた時もそうなのですね。
そのわけを、これからじっくりと説明します。
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– 逆境の中にその人がいる –
シンデレラはなぜ、王子さまに気に入られたのでしょうか?
容姿が美しかったから?
ドレスが素敵だったから?
立派な馬車は、身分が高いことを思わせたから?
それらの総合点が1位だったから?
いいえ、違います。そこに物語の本質が含まれていると考えます。
王子さまは、いずれ王様になることを約束されている。いわゆる、身分の高い、お金持ちです。そして、相応の教育も受けている(はずです)。
そんな教養のあるステキな王子さまが、単にきれいなだけで、その女性を妻に迎えたいと考えるでしょうか?
ところが、王子さまは舞踏会の間中、彼女のとりことなってしまいました。
これは何を意味するのか?
シンデレラは容姿がきれいなだけでなく、立ち振る舞いがステキだったり、相手をあきさせない会話ができたり、思いやりのこころで接していたからでしょう。
気品は、美しさに優るのです。
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物語をふりかえってみます。
シンデレラは母親ゆずりのやさしいこころを持っていました。
そして、継母や義姉から過酷ないじめにあうという、世間で言うところの不遇の時代でも、その心を失うことがありませんでした。
できるだけやさしい言葉かけを行っていました。
ここにシンデレラの話を解くひとつのヒントがあると考えます。
引用文献:「葉隠入門」 三島由紀夫 著
「武士道といふは、死ぬ事と見付けたり」の一句で有名な葉隠を三島由紀夫氏が解説した書です。
その中に、「逆境」という項目があって、
「不仕合わせの時くたぶるる者は、やくに立たざるなり」(聞書第二 156頁)
という短く厳しい一文に、三島氏が、これまた、簡潔な解説を添えています。
「人々は、けっしてしあわせのとき、くたびれない」(三島由紀夫)
逆境の時、くたびれなかったシンデレラは、しあわせだったのですね。
そんな、シンデレラも人知れず、涙を流した時がありました。
(だって、女の子だもん)
– 魔法がかかるとき –
シンデレラの物語の中盤。(ディズニーの映画版より)
舞踏会に行きたくて、母の命ずる仕事を一生懸命に片づけたものの、時間がなくて着ていくドレスを仕上げることができません。あきらめ顔のシンデレラが部屋に戻ってみると、小鳥やねずみが仕上げてくれた立派なドレスが用意されているではありませんか。
「私も舞踏会に連れていってください」
ステキなドレスをまとい、家を出ようとした母たちに呼びかけます。
シンデレラの美しさを見た姉はショックでとまどいます。
しかし、継母はあくまで冷静に弱点を探します。
「首飾りのアクセントはステキね。でも、これはあなたのものではないようね」
シンデレラの衣装は、姉の首飾りやリボンなど、彼女たちが活用しなかったものをネズミが集めて手直ししたものでした。
怒りと嫉妬に狂った姉は、シンデレラの装飾品を次々にはぎとり、外に出向くことのできない貧相な外見におとしめてしまいました。
希望を奪われたシンデレラは家の外の噴水のそばで悲嘆に沈みます。
「小公女」(バーネット作)に同じような場面があります。
「もうだめだとおもうときになって、きっとなにかがおこるのよ。
魔法にかかっているようにね。
そのことさえいつもわすれずにいられたらいいのにねえ。
そうすれば、これでおしまいだということはけっしてないんだわ」
家なき子となった主人公セーラが、もっとも悲惨な状況のときに語る言葉です。
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さて、絶望的な気分のシンデレラ
そこに魔法使いの妖精が出現!
ドキドキする、物語の山場です。
– 奇跡と時間の関係 –
「もうダメだわ」というシンデレラに
「夢は信じる人のところにしか来ないのよ」という妖精
妖精が魔法をかけ始めると、
かぼちゃは馬車に、ねずみは白馬に、馬は御者に、犬は執事に変身する。
魔法の呪文は、「ビビデ・バビデ・ブー」
シンデレラに魔法をかけると、とびきりきれいなドレスとガラスの靴が与えられる。
「舞踏会は待ってはくれないのよ。
さあ、踊って、笑って、あなたの舞踏会へ」
「舞踏会」は「人生」という言葉におきかえるとしっくりします。
ところで、魔法をかけ始めるとき、妖精は言います。
「奇跡には時間がかかるもの」
努力と成果は比例関係ではなく、あるところまで、成果は労力の下にあるのです。
どうやら、成果は指数関数的に上がってくると考えた方がいいようです。
もし、やれば2倍の成果が約束される仕事があるとします。
その仕事の成果は次のように見えます。
2、4、8、16、32、64 6の労力を使う鈍才
128、256、512 3の労力で行う秀才
1024 1の労力で成し遂げる天才
今まで目立たなかった人が、あるところで人目につくと、急にブレイクする現象は、こういうことなのでしょうね。
最初の努力は報われない。
なぜか?
そのほとんどは、ただ単に、やめるから。
「あきらめない」ことは、それだけで大変な才能なのですね。
そして、シンデレラもあきらめずに、いっぱい夢をたくわえてきたのですね。
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– 魔法が残す三つの疑問 –
ステキなドレスをまとい、かぼちゃの馬車に乗って舞踏会に乗り込んだシンデレラ。
その立ち振る舞いは、王子さまを魅了します。
そして、楽しいとき …… は一瞬で通りすぎる。
(夢は夢なの。永遠に続くわけではないの。夢は夜中まで) – 妖精の言葉
12時の鐘を合図に魔法が解けてしまうシンデレラ。
早くその場を立ち去らなければいけません。
その際、あんまり急いでいたので、靴を脱ぎ落としてしまいました。
王子さまに残された手がかりは、ガラスの靴だけ。
「この靴にぴったりの足の人」を探す。
これにより、灰かぶり娘が意中の人であったことがわかるのです。
よかった。よかった。
おしまい。
……じゃない!
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「ガラスの靴」の意味を汲み取らなければ、私の話は終われません。
私が、私とあなたに提示する疑問は次の三つ。
1)魔法使いの妖精は、何の役割を持ってやってきたのか?
2)なぜすべての魔法が解けてしまわなかったのか?
⇒ 言いかえると、「なぜ靴だけが現実世界に残った」のか?
3)ガラスの靴は何を意味するのか?
さて、いよいよシンデレラの物語が謎解かれていきます!
まずは、2つめの疑問までひもといていきます。
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魔法使いの妖精は、「幸運の女神」あるいは「チャンス」なのでしょうね。
この女神、たまたま通りがかるふりをして、実はじっと待っている人の所にしかやって来ない。
そして、やさしい心と夢を持ち続けているシンデレラのもとに現れます。
しかし、 夢は夢。
チャンスは生かさないと、何も残らないまま終わってしまいます。
チャンスの時に行動した人だけに次の現実が現れる。
その次の現実が、夢を本当の現実にしてくれるのです。
– 行動すれば、次の現実 –
舞踏会に参加したシンデレラは、次の現実
= 成功への手がかり
を手に入れるのですね。
その、チャンスを現実につなぎとめる手がかりが、
「靴」
であったわけです。
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– ガラスの靴の意味 –
シンデレラにとって、ガラスの靴は夢をかなえる成功への手がかりです。
もっと具体的には、靴は何を意味するのか?
これにはふたつの意味があって、
1)成功への手がかりは、意外な場所にある。
みなは、王子さまを獲得するのは、ドレスや身分や装飾品であると考えます。
ところが、シンデレラが現実に獲得したのは、人が注目しない靴。
2)成功への手がかりは、その人にしかないものにある。
ドレスや身分や装飾品で競うのは、自分を一番上等に仕立てる行為。
しかし、靴はその人の身にしか合わない。
つまり、成功への手がかりは、
「思わぬ場所にある、自分にしかないもの」にある。
それは、
「ナンバーワン」ではなく、
「オンリーワン」にあると解釈すると腑に落ちます。
シンデレラが手に入れた、成功への手がかりは、
「オンリーワン」 そして、
「希望」でもあったんですね。
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– 内面と外面 –
やさしい心と夢を希望にかえる力を持った少女、シンデレラ。
彼女の幸福は、ふってわいてきたわけではなかったのですね。
シンデレラのお話は、
「不幸な人」が「幸福」になった物語ではなく、
「内面のすばらしい人」が「内面にふさわしい外面」を手に入れた物語
であると、私は考えるのです。
王子さまによってしあわせになったのではなく、
しあわせの糸をたぐりよせると、そこに王子さまが待っていたのですね。
シンデレラは、不遇ではあったけれど、ふしあわせではなかった。
物語の最初から、しあわせになる種を持っていて、それを育んできた物語なのですね。
やさしい心と夢を持っていて、辛抱強く幸運の女神を待つ力を持っている。
行動を起こすことで自分らしさを発揮して、夢を希望にかえ、ついに現実のものとしてしまった、サクセス・ガールなのです。
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これは、「あなたにも起こる」サクセスストーリーなのです!!
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追記
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半ばで紹介した、「小公女」もシンデレラと同じような物語の構造になっています。
・初めは、金持ちの子
・やさしい心を持つ子
・希望をすてなかったこと
・屋根裏に住まわされていた(両者に共通していることなのです)
一方、プリティ・ウーマンの物語の構造は、異なっています
女の子は、
・貧相なため、見下されたブティックの店員に、「損したわね」と皮肉を言いました。
・やはり屋根裏で暮らします。
しかし、そこは、ペントハウスという、豪華な最上階のスイートルームです。
(3つの話で、すべての主人公が屋根裏に住むという物語の作りは興味深いです)
・少女の内面において、特筆すべき、人間性の変革はみられませんでした。
このような理由により、プリティ・ウーマンは、シンデレラとは、根本的に物語の構造が異なると考えているのです。
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さて、少し辛口の話をします(批判はしたくはありません)。
右肩上がりのファンが押し寄せたディズニーリゾートにいくらかの陰りが出ています。
最近のテレビのCMで、
「夢が叶う」ディズニーリゾートと紹介されています。
このうたい文句に私は、違和感を覚えます。
だって、自分で行動せず、努力もせず、勝手にディズニーが自分の夢を叶えてくれるわけがないでしょう!
ディズニーに行くと、「夢が叶う」のではなく、「お金がなくなる」のです。
もちろん、お金の価値の分、楽しめればいいのですが…。
ところで、私は、2020年にアメリカのディズニーランドを訪問する予定にしていました。
マイルで、ロサンジェルス行きの特典航空券(マイル換算による無料航空券)がとれたからです。
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その後の話
※ そのロサンジェルスへの旅は中止となりました。
楽しみにしていたディズニーランドも閉園しています。
コロナ感染症が発生したためです。
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残念なのは、取得していた特典航空券は、通常のエコノミーではなく、ファーストクラスだったのです。
往復料金で200万円くらい相当のものです。
金持ち感覚を味わうことは、存外難しいものですね。
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ここまで読みすすめてきたあなたにお礼を言わせてください。
ありがとうございます。