海馬は、記憶に大きく関係する部位として知られています。
海馬は、直近から、3年くらいまでの記憶を保持していると言われています。
・症例HM (表記として“H.M.”、“Henry M.,”など, 1926年2月26日 – 2008年12月2日, )
彼は、難治性てんかんによって、海馬を摘出した症例により、その働きが注目されました。
HMは難治性のてんかんを発症していました。てんかんの原因は、9歳のときの自転車事故であるとされています。(ただし、結論は出ていません)
彼は部分痙攣を何年も発症しており、16歳の誕生日からは強直性間代性痙攣も発症するようになりました。
1953年に、HMはハートフォード病院の外科医ウィリアム・スコヴィル にかかり、治療を受けましたた。
以下が、手術によって、取り除かれた部位です。
HMの海馬、海馬傍回、扁桃体のおよそ2/3が切除されました(内嗅皮質は全て破壊されました)
・海馬を取り除くと、どうなったか?
手術の結果、HMの状態は、
1 重度の前向性健忘 (=新しいことを覚えることができなくなりました)
2 時間によって強弱の差がある逆向性健忘(いくらか前まで、過去の記憶がなくなりました) (Smith & Kosslyn, 2007)。
⇒ HMは新しい出来事や新しい知識について長期記憶を形成することが全くできませんでした。
同じ人と出会っても、いつも、「初めまして」と挨拶をしていました。
– 彼は基本的に思い出のなかを生きていました(Corkin, 2002)
このような事例から、海馬が萎縮する、アルツハイマー型認知症では、新しい記憶を保持することができないことが分かりました。
アルツハイマー型認知症では、問診だけでなく、画像診断も加えると、診断の精度が上がります。