同じマンションに住んでいる方で、由布院に別荘を持っている方がおられる。
秋の初旬、由布院から松山のマンションに戻ると、開口一番、「暑い」と言われる。
「暑い、暑い。こんなところには、いられない」
せっかく、帰って来たのに、また由布院に引き返すと言っていた。
由布院は、盆地に当たる。
由布岳は、1500mほどで、それほど高い山ではないが、低置に見える由布院は、海抜700mの高度にあるらしい。
説明を聞いて、そんなものかと思ったが、よく考えると、我々が普段、通行する高速道路でも高度500mくらいのところがありそうで、そういう場所は、冬に積雪が起こりやすい。
また、山の天候により、突然の雨や霧も経験している。
盆地は、山の中より安定しているとしても、冬の寒さは、高度があれば、いくばくかはあろう。
五千尺ホテルという名の名物ホテルが、上高地にはある。
「アルプス一万尺、こやりの上でアルペン踊りをおどりましょう」という歌がある。
1尺は、約3mだから、アルプスの山は、3000m。
そして、上高地は、1500mに位置していることを意味している。
由布院は、その半分ほどだから、2500尺に少し足りないというところか。
自然がもたらす景観と、観光用に作った店の並びが、なかなかいけている。
宿泊客だけでなく、観光バスで、寄っていくプランもある。
昔ながらの店あり、ジブリの店あり、お箸専用の店ありで、狭いとおりに人通りが多い。
初めて訪れた時、宿にたどり着くには、大勢の人をかき分けて進まなければ辿り着けないということを知ってショックを受けた。
車の運転に臆病な私に代わって、嫁がその中をかき分けていった。
名旅館と呼ばれる玉の湯に行くには、一番人だかりが多い場所を通らされる。
次いで、亀の井別荘の近辺も人出が多い。
この人の中には、日本人のみならず、他国の人も混ざっている。
欧米系の顔をした人もいるにはいるが、ごく一部にしかすぎない。
この由布院の名宿と呼ばれる、玉の湯は、朝食が生ジュースを除いて残念な塩梅だった。
それで、亀の井別荘も和食を避けていたが、最後に朝食にすると、量は多くないが、質がよくて、驚いた。
豊後牛の温泉蒸しは、美味で、朝からペロリと平らげることができた。
魚は、鮪というが、臭みもなく、普通に十分おいしかった。
この宿の談話室には、暖炉があって、無料でコーヒーや紅茶を飲むことができる(当然、宿泊客限定)。
その中に存在感をアピールするもの巨大なものがある。
これは、レコードの音を再生して、音にするスピーカーである。
こうしたレトロな一品を好むかどうかは、個人の趣向による。
しかし、まだまだ秘密はありそうなので、由布岳目指して、また訪問するだろう。