数百人以上の職員を抱える病院では、様々な人間関係が発生します。
そして、事故の手前のインシデントがあると、それを責める人が出てきます。
インシデントの目的は、「事故を防ぐこと」にあるのですが、報告書では、事故を責めることが多くなります。
改善のために、「事故を起こした人を責めずに起こった出来事をそのまま記載する」という前提があるにもかかわらずです。
醜いインシデントレポートでは、看護師の言うことを無視した医師の名を上げ、個人攻撃しているものもありました。
ある時期、院内で報告されている大量のインシデントレポートを見たとき、驚きの声を出さずにはいられませんでした。
それは、報告書ではなく、感情のはけ口の場ともなっていました。
インシデントは、それを次に起こさないために改善するためのデータです。
改善策を出さず、悪口報告書を出すことにどれほどの意味があるでしょうか?
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私は、そういう意味のないネガティブな書類に嫌気がさして、別の方式がとれないものかと思案していました。
その結果、「インシデントを記載する際は、必ず改善方向も記載する」ということにしました。
今回の出血インシデントに対しては、こういう報告書を作ります。
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・採血後の出血を防ぐために
血液検査の採血後に出血する患者さんがおられます。
「出血しますから、手で押さえてください」
と声かけしているにもかかわらず、うまくいかない例があることが発覚しました。
その大きな原因は、その人が荷物を持っていることにあります。
荷物を持っていて、すぐに止血することができない人がいることに対して、以下の対策を立てます。
1 荷物を置く場所を作っておく。
採血後、すぐに止血することができるように反対の手をあけておく必要があります。そのために、荷物を置くスペースを作ります。
2 荷物を携えている人に対しては、その場で約30秒間目の前で止血してもらいます。
採血後に担当看護師は即座に容器の処理をしないといけません。
その時間が15〜30秒間くらいあるなら、その間、目の前に座ってもらって止血してもらいます。
3 片手はない、あるいは麻痺などで反対の手がつかえない人については、看護師が少しの間、手を添えて止血していることを確認します。
この3つの方法をとることで、概ね、採血後の出血を抑えることができると思います。
これで防ぐことができない例があった場合は、さらに再考します。
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当院では、A4の紙で1枚に収まるようにレポートを書きます。
分量の少ないものでも1枚使います。
多いものは、なるべく1枚にまとめるようにしますが、どうしても収めきれないものは、1ページにこだわらず、重要な1項目として数ページを費やします。
インシデント報告は、大きな事故を防ぐための重要なレポートです。
だから、変な使い方でなく、友好的……失礼、有効的に使用することが大切なのです。