2回ほど、引っ越しに話になってしまいました。
今回は、より具体的な話に移ります。
といっても、引っ越しの話もけっこう、リアルな内容なのですが。
ここに起こっている物事の本質が何なのか、それを知ることが重要です。
今日もぼくの頭の中から湧き出てきた、作り話を始めます。
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登場人物紹介
講師
一文字浩介
地方の準難関大学卒であるが、なぜか帝国大学の講師をしている
心理学者の若手
興味は豊富で、多彩な知識を持つが、まだ何も大成していない
学術とは変わった認識を持つ
言葉使いは、ていねいだが、少し変わり者
生徒1
橘涼香
元、理系女子
宇宙など、壮大なものにあこがれる
宇宙物理学科を目指し、大学受験では合格できるレベルにあったものの、研究に残ることができる者は、ごく一部の天才だけと知り、人文科学を専攻する
気丈な性格といえる
生徒2
円山由貴子
文系女子
ふくよかで、穏やかな才女
彼女の優秀さは、時にかいまみられる
感性豊かな性格
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一文字:先で、引っ越しの話をだしたのは…
橘:先生のグチ話です!
円山:涼香ちゃん、無謀な決めつけをしてはいけません。運が悪くなりますよ!
橘:(舌を出して)先走って、ごめんなさい。結論を出すのが早急すぎました。
一文字:涼香君は、かわいらしくて知的なステキな女性ですよ。それを自分で壊すのは、もったいない。
橘:面と向かって言われるのは、少しむかつきますが、私も反省しています。
一文字:では、引っ越しの話をだした理由を説明しましょう。
1 人生には、必ず、困りごとがふってくること
(花の色は うつりにけりな いたずらに わが身世にふる ながめせしまに:小野小町)
生まれ、財産、その他、関係なく必ず、やってきます。
それがないのは、おとぎ話に出てくる人です。
君たちも、人生や人間関係に不満を持ったことは、一度や二度はありますね。
橘:というより、数え切れないほどあります。
円山:ない人がいる方が不思議です。
橘:私は、自分のちょっとした不満を先生にぶつけている感じがします。
一文字:よく自己分析できましたね。
まずは、自分を知ることが初めの道しるべです。
スターウォーズでも、ジェダイの騎士になる前には、パダワンという階級で修行をします。
その過程をしっかり固めないと、ダークサイドに落ちる危険性があるからです。
円山:それで、このテーマの困りごとの続きを教えてください。
一文字:はい。
ここで、重要な2つの分岐点があります。
A)困りごとを不幸だと思うかどうか?
B)困りごとを解決しようと動くことができるかどうか?
このポイントを押さえることが大切です。
円山:AとBとは、どのように観点が違うのですか?
一文字:Aの困りごとを不幸と思うかどうかは、認知の問題です。
その困りごとを、
「自分は運が悪い」と思うこと。
「人生でこういうことは起こるものだ」と腹をくくっている人。
この2人に、同じことが起こったとしてもも未来が変わってきます。
橘:それは、感覚的に分かります。具体的には、どのように変わってくるのでしょうか?
一文字:
運が悪いと考える方は、自己評価と自分の環境を否定的に考えがちです。
そうすると、その方の未来は、自分の思っている通り、マイナスの方向に進んでいくことが普通です。
よいことが思い浮かばなくなります。
その上、少しだけでも、よいことがあっても、それを見逃したり、評価しなくなったりします。
悪いことを見つける習慣が身につきます。
円山:うーん。それは、すごくありえそうな気がします。
一文字:ぼくは、「これは、まずいな」と思う禁句がいくつかあると考えています。
「だって」
「どうせ」
「でも」
「できないんでしょう?」
この口グセを持っている人は、ほぼ例外なく、自分は不幸になる悪循環に入っていると認識しています。
本当に、どうなのかは別にしてです。
ただ、人は、その人の内面が外面を規定していきます。
自分が思ったような人間になっていくのです。
橘:なるほど。自分の内面のルールが外面を作り出していくということですね。
一文字:その通りです。
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橘君、素直になりましたか?
橘:放っといてください!…と言いたいところですが、確かに腑に落ちるところがあります。
円山:では、禁句の解説をしてください。
一文字:感覚的に分かると思います。すべて、否定的な表現ですよね。
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「だって」「どうせ」「でも」「できないんでしょう?」
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こういう口癖使っている方は、その言葉通り、人生がマイナスに沈んでいきます。
円山:これは、どういう理論なのでしょうか?
一文字:「だって」「どうせ」「でも」は、相手の発言を否定する言葉ですね。せっかくよいと思う提案をしても、その方が受け入れることができないと、拒否になってしまいます。
すべての助言は徒労に終わります。
その際、受診者だけでなく、治療者も無力感にかられます。
円山:治療しても無意味な世界となるのですか?
一文字:半分は当たっていると思います。
その後に好転するかどうかは未知数です。
円山:なるほど。
一文字:難しく考える必要はありません。
日常的な言葉で、否定的されると、相手の言葉も否定に向かいます。
「だって」「でも」の発言に続く言葉は、言葉を投げかけた人への反発です。
それとともに、
「だって、できない」
「でも、うまくいかない」
という文脈が続くことが自然です。
つまり、肯定的に考える要素が、なくなっていくのです。
この口グセに気をつける必要がありあす。
橘:では、その口グセをどのように変えていったらよいのでしょうか?
一文字:一例をあげます。
「どのようにしたら?」
「そのようになったら?」
という問いかけに変換することで変化します。
円山:それは、どういう意味でしょうか?
一文字:「でも」「だって」は耳をふさぐ言葉です。
人のよい意見を取り入れることができませんから、よい変革もありません。
それから。「でも」という言葉には、たいていある言葉が続きます。
それは、何でしょうか?
橘:「でも………ダメだった。」
「でも………できなかった。」
「でも………うまくいかなかった。」
一文字:いずれもうまくいかない否定の結果の言葉ですね。
「初めに言葉ありき」という有名な言葉があります。
知っていますか?
円山:新約聖書「ヨハネによる福音書」第1章からですね。
言葉がなければ、物事が始まらない。
一文字:そうです。
日本でも、言葉は、「言霊」と呼ばれていました。
言葉は、物事を定義するものとともに、感情を印象づけるものだったのです。
橘:なるほど。
一文字:発する言葉によって、未来が変わってくるということです。
先の例で、次のように言葉を変えたら、続く言葉は、どうなると思いますか?
「どのようにしたら?………うまくいくだろうか?」
「そのようになったら?………よくなるだろう?」
橘:発想の視点が変わってくるということですね。
一文字:ぼくが、引っ越しの話をしたのは、引っ越しをする人は未来を変えたいと思っている人が多いと考えたためです。
(残念ながら、そのタイミングで、お金や保証人がなくてできない方もおられますが…)
橘:なるほど。
未来見据える視点を持っているかどうかの試金石となっているのですね。
一文字:そういうことです。
いたずらに説明に時間を費やしたわけではないです。
円山:困りごとが降ってくる時に、どう認識するのか、そして、どう行動するのかがこの講義の本質なのですね。
現実に、引っ越しするのは、すごくエネルギーが入りますね。
一文字:円山君は懸命な上に、やさしくて助かります。
考え方は、とても重要ですが、行動が伴わないと何も変わりません。
それが、「見たくない現実」です。
橘:私は、意地悪で、迷惑かけていますね。
一文字:いえ、橘君は、ご自分の個性を生かすのがよいと思いますよ。
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困りごとが降りかかった時に、どういう考え方と行動をするかが分かれ目
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