毎月、市が主催する、「心の相談」という時間があります。
1ヶ月に1回、日を決めて、2枠の予約制となっています。
勤務医時代は、毎月、通っていた時代もありましたが、一時、中止になっていた頃もあるように思います。
そうでした。
前は、「県」が運営する保健所でした。
今回は、「市」の主催ですから、予算のつく場所が変わったのでしょう。
現在は、毎月行うのは、負担だし、他の病院の医師もそのようなので、3カ所の病医院で交代でとりおこなっています。
本日の1名目の相談の方は、病気としての診断すら難しいという方でした。
当院で診てほしいという要望でしたが、まずは、大学病院など先進医療を行うことのできる病院を受診して診断をつけてから行わないと、治療指針も立ちません。
また、病名が不明だと、将来、困った時に申請する用紙に内容が書けなくなります。
現在、かかっている主治医が、大学病院に紹介されるくれるかどうは分かりません。
自分のつけた診断に文句をつけられて、プライドを傷つけられて、逆上する畏れもあります。
どうしてもいけなかったら、とりあえず、自分のところでみて、それから、大学病院に紹介することにします。
さて、1例目は、難治例の話でしたが、相談内容は納得できました。
問題は、2例目です。
質問事項としては、普通の話でした。
職場で働くのが厳しいので、部署異動できないか、休職できないかというものでした。
主治医には、診断書を書いてもらっています。
それでも、配置換えできる間、休んではいけないと言われているそうです。
そんなことがあるのか?
⇒ 実際にそういう会社をみた経験はあります。やばい会社ではないかと思いました。
いっそ、休んでしまう手もあると伝えました。
でも、本人が休むと、他の人の迷惑になるからと、休まないと言います。
会社に対しては、労働基準監督署に申し立てる方法もあることも説明しました。
でも、会社と後で、もめるのは嫌だから、乗り気でないと言われました。
次々、意見を出しても否定されるため、
「なら、どうしたいのでしょうか?」
と逆にこちらが疑問に思ってしまいました。
それから後、ゾンビ企業は、いずれ淘汰されていくため、過度に助けなくてもいい。
今後は、世界がさらに厳しくなっていく恐慌が起きる可能性が高いため、今がんばって、ゾンビ企業を助けて、自分たちが倒れても意味がないこと。
とにかく、生き残っていくことが大切です、
などをお話してしまいました。
いわゆる、景気動向の暗い話です。
普通の人は聞きたくもない、年金では2000万円足りないというような夢のない、地を這って生きていくような俗世界の話です。
心の相談は、1時間という普段の診療より時間に余裕があるため、よけいな話をしてしまった点もあるのかと思います。
しかしながら、こうした発言をしたことは、自分でも理解できませんでした。
夜、時間が経って考えて分かったことがあります。
2例目の相談者が行う内容は、「本来、主治医が行う」ものです。
それを主治医が説明せずに、関係のない医師が言うのは、どうなのだろうか、という違和感を感じていたことに気づきました。
関係ないものが関わりも持たされて、主治医は説明をしないというのが納得できなかったのだと思います。
私が診療している県では、比較的新しく医学部が創設されたため、医学部1期生が60歳すぎくらいではないかと思います。
その1期生の方たちが幅をきかせているため、その大学の医局に加わろうという気が起きません。
(私は、他県の大学出身者なのです)
そのため、一匹オオカミでやっています。
それでも、他の医師に対して、嫌な事を嫌だと言えないことが、私の大きなストレスになっているようです。
普段は、我慢して、ひっそりやっていますが、医師そのものの悪口を言ってはよくないと控えているため、妙な話になってしまった気がしました。
2例目の相談者には、気の毒なことをしました。
それは、主治医が答えるべき質問事項です。
応えてくれなければ、信頼関係を築いていけませんよ、というような話をシンプルに説明した方がよかったと今は考えています。