・アミロイドーシスという病気
全身性アミロイドーシスという病気があります。
(指定難病28に指定されています)
これは、ナイロンに似た繊維状の異常タンパク質が全身の臓器に沈着して、臓器の機能障害を引き起こすものです。
心臓、腎臓、肺など様々な臓器に沈着する可能性があります。腎臓の障害によって透析治療をされている方も多くおられます。
※出典 慶応大学
この病気に罹患している人は、日本国内に数千人〜数万人と言われていますが、正確な人数は、把握されていません。
・脳アミロイドーシス
アミロイドは、様々な臓器に沈着すると先述しました。
では、アミロイドは、脳にも沈着するのでしょうか?
⇒ はい。アミロイドは、脳に沈着します。
これが、「脳アミロイドーシス」です。
・脳アミロイドーシスって、珍しい病気?
実は、脳アミロイドーシスは、日常的にみられる病気なのです。
⇒ 「えっ?そんなこと聞いたことがない!」
そうかもしれません。
言葉の使い方や解釈で、知られていないだけでしょう。
アルツハイマー型認知症は、脳にアミロイドが沈着することで起こる病気なので、その数は、絶大です。
2020年頃で、600万人を超え、2025年には、国民の5人に1人、700万人超の方が罹患すると推定されています。
でも、アルツハイマー型認知症は、難病指定されません。
勘のいい方は、その理由がお分りになるでしょう。
⇒ アルツハイマー型認知症を難病指定することになったら、国の社会保障費が暴騰し、財政破綻をきたすからです。
※同様に、リウマチやパーキンソン病も重度でなければ、難病の対象となりません。
・アミロイド蛋白が形成される過程
アミロイドβ前駆体タンパク質(amyloid-beta precursor protein)というタンパク質があります。
このタンパク質は、神経の成長と修復に必須の蛋白で、これなくして、人は生存することができません。
しかし、アミロイドβ前駆体タンパク質は、 セクレターゼ (secretase)という分解酵素によって、分解されて断片化されます。
この断片化された蛋白が、幾重にも折り重なって、大きな繊維として、脳に沈着することがあります。
また、沈着した繊維は、さらに凝集する傾向にあります。
こうして、アミロイド繊維が沈着した脳細胞は壊死を起こしていくのです。
壊れた細胞は、元に戻りませんから、老化とともに正常な細胞が減少して、認知症の症状を呈することになります。
※出典 PDBJ(Protein Data Bank Japan)
・知識があるのに、なぜ、アルツハイマー型認知症の根治的治療薬が開発されないの?
アミロイドβ前駆体タンパク質が同定され、分解酵素も分かっています。
そのため、多くの研究者は、分解酵素である、セレクターゼの働きを抑えることができれば、アルツハイマー型認知症を予防するワクチンを開発することができる考えました。
そうしてワクチンを開発したものの、脳炎による死亡率が高いなどの有害事象を及ぼし、未だに有用なワクチンを作ることができていません。
アミロイドβ前駆体タンパク質自体も、生体を維持するために必要な蛋白であるため、除去することができません。
こうしたアプローチによる治療は、ことごとく失敗に終わったため、同様の方法の治療開発にストップがかかっています。
異なるアプローチによる治療が必要とされています。
それは、遺伝子治療かもしれないし、その他の方法かもしれません。